〜前 編〜

■11月某日 曇り
 今回の旅は、いつも名古屋のフェアに参加していただいていて、お店でも何度か展示会をしていただいているアクセサリー作家armariumのカンダチナツさんと。東京に移ってからというもの、ひとりでの買付けも多かったので、彼女と河村、そして私の三人旅は賑やかで楽しみ。以前だったら、自分のことだけで手一杯で余裕が無く、誰かと一緒にフランスに来ることなど考えもしなかったのだが、前回、ロンドンに留学中だった奥野ビル一階の「裏庭」の妹さんと来たこともあり、私自身誰かと一緒に来る楽しみに開眼したのだ。

 今回はちょうど私達の買付けとカンダチナツさんがフランスに来る時期がぴったり合ったため、ホテルも一緒、旅の始まりも一緒。1時間早くJALで到着する彼女が同じターミナルにエアフランスで到着する私達を待って、空港からRER(郊外高速鉄道)でパリの市内に向かうことになっている。RERは一般に治安が悪いと言われているので、初のパリひとり旅にはややハードルが高いが、私達は普段乗っていることだし、三人一緒なら大丈夫。

 私達がイミグレーションから出てきて、荷物のターンテーブルまでやって来ると、チナツさんが「サカザキさ〜ん!」と、なんなく私達を見つけ出してくれ、無事にパリで再開。はるばる遠いパリでの再開はいつもよりもいっそう嬉しかった。

 RERでホテルの近くのリュクサンブールへ。ホテルに着くと、まずは一緒にスーパーで水や朝食などのお買い物、そして行きつけのキャフェで晩ごはん。お昼間は別行動でも、晩ごはんは出来るだけ一緒にいただくことに。

フランスのクリスマスデコレーションは12月に入ってからのお店がほとんどなのですが、こんな気の早いお店を発見!(ここは普段はごく普通の文房具屋さんなのです。)吊されたクリスマスカラーのソックスが可愛いです。

■11月某日 曇り
 買付け第1日目はいつもお世話になっているアポイントメントを入れたディーラーの元へ。今朝は比較的ゆっくりのため、朝から近所のキャフェでキャフェ・クレームを飲んでひと息入れる。
 いつものようにバスで向かうが、今日のパリはこの時期にあるまじき暖かさ。というよりも暑い!11月のパリがこんな暑いなんて今までに無いこと!セーターやヒートテック、毛皮のマフラー、手袋まで、寒さ対策の衣類はたっぷり持て来ているのだが、逆にこの厚さで着られる物は何も無い。セーターしか持ってこなかった自分を恨みつつ、ディーラーの元へと向かう。

 久し振りに会う彼女とは、商談前にお互いの近況を様々なおしゃべり。なかなか話しが尽きない。一通りおしゃべりが済むと、私のために持って来てくれた沢山のアイテムをチェック。今日は終日その中から選ぶのだ。まず最初は大物のレースのハンカチから。「こんな物があるんですよ!」と言われて出てきたのは、ポワン・ダングルテールのハンカチ。レース部分にイニシャルが入っている。ポワン・ド・ガーズやアプリカシオンのハンカチはさほど珍しくないが、ポワン・ダングルテールのハンカチを手にするのは初めて。ひとつ持っておきたいハンカチだ。他にも繊細なフルール・ド・リス模様のホワイトワークのハンカチも。繊細でびっしり施されたフルール・ド・リスの刺繍に魅せられてしまった。

 それから延々レースの山を物色。立体的なモノグラム、繊細なニードルの細工、様々なホワイトワークアイテムをセレクト。そして奥から出来たのはリボン刺繍のレラーラック。リボン刺繍の物は今まで数々扱ってきたが、レターラックは初めて。厚みのある立体的な形がより目をひく。「こんな物、まだあるんだ!」と思わず声が出てしまう。他にも同じくリボン刺繍のハンカチケースやロココなどなど。シルク生地やリボンなどの素材も。ランチを挟んでじっくり選ぶこと数時間、気付くと夕方になっていた。

 よ〜くマダムにお礼を言って、彼女の元を後にする。いつも私のために様々な商品を探してきてくれる彼女に感謝。時刻は夕刻だが、まだ暗くはなっていない。「最後にあそこへ!」と河村と向かった先は、以前偶然ピアスを手に入れた場所。そこはアンティークディーラーではなく、エステート・ジュエリーを扱うディーラー。エステート・ジュエリーといっても、単なるセカンドハンドとは一線を画すグレードの高い品揃え。カルティエやショーメなどのグラン・メゾンのジュエリーに混じって、沢山の古いジュエリーも置いている私達の密かな仕入れ先なのだ。前回来た時には何も仕入れる物が無かったのだが、今回はどうだろうか?

 ブザーを押してロックを解除して貰い、こちらのジュエラーに多い二枚扉を通り(扉は一枚ずつしか開かず、外扉が閉らないと内扉が開かない仕組み)、オフィスの中へ。河村とふたりでケースの中の様々なジュエリーをじっくり眺め、四つの瞳で何か私達の好みに合うものがないかを探す。
 今日は大振りなジュエリーばかりが目に付いたのだが、そんな中大きさばかりではない、繊細なガーネットとシードパールのピアスが目に入ってきた。オーバルの形も魅力的、ガーネットの色合いも良い。早速ケースから出して貰い、ルーペでチェック。ここの女性スタッフはフランスでは珍しく誰もが愛想が良くにこやか。ゆっくり商談に入り、納得の金額でゲット!今日のすべての仕事を終え、沢山の荷物を担いでホテルに帰ってきたのは午後7時前だった。

 ちょうど同じ時刻にカンダチナツさんもホテルに帰ってきた。今晩は近所のスーパーで様々な食べ物やワインを仕入れてきてお部屋宴会、三人揃ってスーパーへ。スーパーでエシレバターが安いことにびっくりする彼女。あらかじめ「大きめのタッパウェアーを持ってくるといいよ!」と伝えておいたので、「私も買って帰ります!」と彼女。河村はお気に入りのタブレ(クスクスのサラダ)、私とチナツさんは私がいつも食べているカボチャの種入りのパヴェパンとハムと玉子のゼリー寄せ、カマンベール、そしてコート・ド・プロヴァンスのロゼ。(暑かったので。)
 私達の部屋で、ヴェルサイユ観光に行ったチナツさんの話を元に、楽しいおしゃべり。明日は彼女も素材やディスプレイグッズを探すために一緒に買付けに行くことに。

この通りパリには美味しい物がいっぱい!フランス人は美味しい物に正直。(笑)美味しそうなウィンドウには皆が群がっています。

■11月某日 曇り
 買付け二日目、時差ボケのため午前5時に起床してしまう。今日は8時にホテルを出るため、ベッドの中でひたすら体力温存!

 今日の買付けは今回同行したカンダチナツさんも一緒。彼女も作品の素材や、ディスプレイで使えるアイテムを探すのだそう。一緒にバスで出掛け、現地で解散、ランチを一緒に食べてまた戻ってくる予定。午後の買付けも一緒だ。ホテルのレセプションで待ち合わせをし、バス停へ。メトロとは違って外の景色が見えるバスは、私のお気に入り。初めての乗るチナツさんも興味深げだ。目的地のバス停で降り、「じゃ、終ったらここのブーランジェーで待ち合わせね!」と待ち合わせ場所を確認し、それぞれの買付けへ。

 私達が今日最初に見つけたアイテムは、マリア様の立体像が入った球面ガラスがはまったフレーム。持っていたのは顔馴染みのマダムとムッシュウ。ずっと以前、ここで同じような宗教物のフレームを目の前でさらわれていったことのある私達は、「絶対誰にも渡さん!」とばかり、すぐに見せて貰い、マダムにお伺いを立てる。(このマダムとムッシュウのカップルは断然マダムが実権を握っているのを知っているのだ。)まずは目的の物をゲット!綺麗な聖母マリアのフレーム、クリスマスのディスプレイにもよいかも…。

 ロココの飾りの付いたフォトフレームは珍しいところから出てきた。思いもよらないディーラーが三つまとめて持っていたのだ。が、すべて状態が良い訳では無い。三つのフレームの中から、一番状態の良い物、洗浄すれば綺麗になりそうな物を選ぶ。(ガラスのはまった物はアルコールでの洗浄が必須!細かなところは、必要に応じて綿棒で!さっぱり綺麗になる。)フレームの内側の手の届かないところに小さな写真が落ち込んでいるが、「ピンセットを使えばなんとか取ることが出来るはず!」と踏んでマダムと交渉。頻繁に手に入らない物だけに、手にすることが出来て嬉しい。

 いつもお世話になっている女性ディーラーには、もちろんアポイントを入れてある。ずいぶん前からメールをくれて私の訪れを首を長くして待っていてくれた彼女とは、会うやいなや抱き合ってビズーで挨拶。「今回はムッシュウも一緒ね。」と河村とは握手。早速どこからともなく「マサコの箱」を出してくれ、私はひとり箱の中を物色。気になる物を引っ張り出しては、傍らの河村に「状態確認して!」とゲキを飛ばす。薔薇のソープボックスをはじめ様々な箱物が出てくるが、私の目的はその箱の中身。今日は台紙付きのシルクのお花のパーツが次々出てきて、「よし!やった!」とばかりにそれらを取り出す。豪華なライラックのお花にシルクのお花のガーランド。そして、「あれ!?」と目を丸くしたのは広巾のレース色々。

 本来、彼女はハンドのレースを扱うディーラーではなかったのだが、今日は何の因果か箱の底から広巾のアプリカシオンのレースが出てきた。お人形に使える巾のアプリカシオンではなく、広巾のボーダーのため「う〜ん、アプリカシオンか…。」と躊躇していると…更に奥底から広巾のポワン・ド・ガーズが出てきた。「えっ!?どうしてこんなレースが?」と思うような繊細で上質なポワン・ド・ガーズ。広巾でマリエの衣装に付けるためのレースだ。確かに高価ではあるものの、専門で扱うディーラーよりもずっとお値打ちだ。河村に有無を言わせぬよう「これ、私仕入れるから!」と宣言し、目をこらして状態をチェック。傷みはない。彼女からいつにもまして高価な物を仕入れてしまった。お思い掛けず上質な物が手に入り、私の高揚感も最高潮に!
 よくお礼を言って彼女とはまた抱き合って別れ、次の場所へ。次の彼女も、また私がアポイントを入れたひとり。さぁ、何が出てくるか?

 ここでは、なんと夏の阪急百貨店のフェアで一緒だった大阪のディーラーとバッタリ再会。私達よりもずっと年下でお洋服を扱う彼女、久し振りの再会に賑やかにあれこれ話し、思わず嬉しくなってしまう。だが、話をしながらも目はキョロキョロとアンティークをチェックし、落ち着かない。一通り話が終ると、早速あれこれ物色。今日は沢山のアイテムの中から、ノスタルジックなハンカチケーズやロココを入手。マダムとムッシュウが協力しながら仕事をする姿に、いつもの自分達の姿を重ねてしまった。

 気付くと午前11時過ぎ。約束の時間にブーランジェリーに向かう。このブーランジェリーはパン屋にもかかわらず狭いカウンターとほんの少しだけ座席があり、ここで食べることも出来るのだ。彼女がやって来る前にバゲットサンドとキャフェクレームをオーダーして席に着くと彼女もやって来た。サーモンとクリームチーズのサンドウィッチをオーダーしてご機嫌な彼女と午前中の収穫について話し、食事が終るとまたバスでホテルへ。午前中、手に入れた物をホテルへ置きに帰り、午後からはまた別な場所に出掛けるのだ。


午前7時のパリ。外はまだ薄闇に包まれています。今回の私達の部屋はオデオン座の広場に面した5階。もう20年来このホテルに泊っています。

 一度ホテルに戻り、今度はまた三人メトロに乗って午後の買付け先へ。午後の買付け先までは、あまり治安が良いとはいえない場所なので、チナツさんには満員の車内にいる間もくれぐれも気を付けるよう伝え、私自身も周囲に気を配るのを忘れない。メトロに降りた後もそこは危険地帯。買付け先にたどり着くまで気が抜けない。目的地に到着すると、また待ち合わせ場所のキャフェを決め、そこからはそれぞれ自由行動。

 私達はまずお馴染みのジュエラーのマダムのところへ。ずっと昔、私が若い頃はビクビクしながらお相手をして貰っていたマダムだが、ここ最近は対等な感じで「お互い納得ずくの関係」といった感じだ。(フランスのディーラーは、最初はなかなか心を許してくれないが、一旦「お客様」と認められれば、非常に愛想良く、大切にしてくれる。)今日はいつも探しているダイヤのピアス(大きさにもよるがダイヤのピアスは意外に高価なジュエリーなので、リーズナブルを探すのが至難の業。)とトワ・エ・モアのダイヤリング。こちらのリングは、トワ・エ・モアと言っても、二つのリングを重ねて着けたように見えるタイプ。繊細なリング2本がひとつのリングに仕立てられているタイプだ。ダイヤの輝きも美しく、何しろ繊細で華奢な雰囲気に魅了されてしまった。

 もう一軒のジュエラーも度々足を運ぶ場所だ。こちらのムッシュウもいつもにこやかで愛想良く、私達は気兼ねなく「これ見せて!」と言うことが出来るひとりだ。今日もガラスケースを隅から隅まで覗くと、小さなサイズのアイテムふたつを発見。ひとつはいちめんにシードパールがセットされたクロス、もうひとつはパドロックをかたどったチャーム。フランスにはあるまじき小さなサイズが愛らしい。ふたつまとめていただくことに。私達もにっこり、ムッシュウもにっこりして別れた。

 古い衣装を扱う初老のマダムとムッシュウは、彼ら自身がまるで骨董品のようにいつも商品と一緒にひっそりたたずんでいる。一通りレースを見せて貰うが、ピンとくるものは無く…。可愛いシルク生地の子供用のドレスに魅了されたものの、いかんせんシルク素材だけに裏側は劣化してジャギジャギに裂けている。「こんな可愛いのに…。」と私と河村。以前より「思い切り可愛いベビードレスが欲しい!!」というお客様の願いを叶えるべく、あちこち探し回っているのだが、思い切り可愛くて状態も良好なものはまず皆無。フランス、イギリスの知人ディーラー達に大号令をかけてあるのだが、未だそのようなものは出ず。こうして毎度、足を運んでいるのだ。

 歩く回ること数時間。そろそろ夕刻、約束の時間が迫ってきた。いつも立ち寄る仕入れ先に何軒も寄ったものの、なかなか思ったものに巡り会えない。仕事終わりに約束場所のキャフェでひと息入れていると、チナツさんもやって来た。どうやら危険な目に遭うこともなく、彼女も満足な仕入れが出来た様子。「何事も無くて良かった〜。じゃあ、帰りはバスに乗って帰りましょう!」と帰路についたのだが…。
 パリの街は夕方のラッシュアワーで大渋滞!その中、後ろ向きの座席に座ったのが運の尽きだった!バスの中は混み合っていて夏のように暑く、座っていても渋滞のためバスが激しくブレーキを踏む度、思い切り身体が振られる。そうしているうちにどんどん気分が悪くなってきた。渋滞で混み合った中、逆向きのまま長時間バスで揺られた挙げ句、バスを降りた時には河村に手を引いて貰わなければ歩けないほどヘロヘロになった私。バスに乗るまでは「帰りに、ライトアップされた夜のノートルダム寺院を見に行きましょう!」などと言っていたのに、とてもそれどころではなく、河村に手を引かれながらホテルへ。夕食も食べぬまま午前9時前に寝てしまったのだった。

夕闇のシャンジュ橋、向こうの方にチラリと見えるのはノートルダムです。暗くなってライトアップされてからのパリの方が美しく感じられるのは私だけ?余計な物が見えないせい?

■11月某日 晴れ
 今日はすっきり起床!12時間近く睡眠をとり、昨日の気分の悪さから復活し、爽やかな目覚めだ。今日は出発もゆっくり。同行したカンダチナツさんは単独行動のため、近所のキャフェで河村と朝からのんびり過ごし、バスに乗って今日の仕事先へ。

 が、いつもはすぐ来るバスが、今日はなかなか来ない。やっと来たバスに乗り込み、目的地へ向かうが、なぜかルートの途中までしか行かず、全員下車させられる。こんなことはパリではよくあること。たぶん今日もどこかでデモかもしれない。(かの国の人達にとって、デモはお祭りのようなものなのだ。)仕方なく他のルートで行くため、ルーブルの北を通るバスに乗り変えたのだが…。ここも今日は道路の閉鎖らしく、ルーブルの北へは行かず、そのままリヴォリ通りを西へとまっすぐ進んで行くではないか!?「えぇっ!?」とバスの車窓を見ながら焦る私達。結局、ルーブルの北ではなく、マドレーヌを経由してたどり着いた先はサン・ラザール駅だった。ここから目的地までバスで行くことは出来ず、地下鉄に乗るために地下に潜る。地下鉄で向かった先から再度バスに乗り、ようやく目的地へ。散々パリの街中を迂回し、1時間以上かかって目的地に着いた時には、はるばる「旅」をしてきた思いだった。


バスからのんびりサン・ミシェル広場を眺めていたら…オデオンからバスに乗って3分と経たない内に降ろされました。あら〜。

 今日の目的は膨大なテキスタイルに埋もれたマダムのところ。いつも超愛想の良いマダムは、ほんの少ししか仕入れない私にも常ににこやか。申し訳ないほど愛想が良く、「紅茶はいかが?」とすすめてくれる。その姿勢が「商売人の鑑」という感じで、彼女と会うと「は〜、商売人やなぁ〜。」と少し呆れつつ、いつも感心してしまうのだ。今日は小さなお花やリス、船など子供向きの柄が織り出された可愛いシルク生地を色違いで。「また次回も待ってるわ!」とにっこり笑顔で言われると、女の私もついつい骨抜きになってしまう。

 次の場所は膨大なデッドストックの在庫を持つディーラー。長い付き合いになる彼女は、度々「あなたのために取って置いたのよ。」と思いがけないものをキープしておいてくれることも。数の沢山あるデッドストック品は私達にはあまり縁が無いものだが、そんな中にもたまにキラリと光るものが隠れていたりするので、隅々までチェックを怠らない。今日も膨大な在庫が眠る倉庫に入れて貰い、素材をあれこれチョイス。ここにやって来るとその時代にタイムスリップしたようで興味深い。今日の出物は素材に使えるお花やブレードなどなど。

 そして、今日の大仕事。私達が「アンティークのデパート」と呼ぶ、やり手ディーラーのところへ。コスチュームと素材、服飾系の在庫では他に類を見ない多大な量を持つ彼女は、「三度の飯よりも仕事が好き」という言葉がぴったり。映画などへの衣装の貸出しはもちろん、パリコレの最中には世界中のスタイリストやデザイナーがやってくるはず。
 ただ、私達のここでの目的は何十メートルも連なる素材の山のチェック。今日は河村とふたりなのでまだ少しマシだが、ひとりの買付けの際にここをすべてチェックするのはかなりの忍耐力と体力が必要。今日も何時間かここでひたすらチェックをして過ごし、僅かな分量のリボンや生地などを持ち帰った。

 そうこうしているうちに今日も夕刻に。最後に河村が以前から欲しがっていたリモージュ焼きの少女のフィギュアをみつけ、念願かなって持ち帰ってきた。ジュエリーをディスプレイしても可愛いし、小さめなサイズが飾りやすくてグッド。思わず「リモ子ちゃん」と命名。

 今日は渋滞に巻き込まれることもなく、無事に戻ってくることが出来た。実は、私達は明日リヨンへ向かうため、チナツさんとは今晩でお別れ。今晩は近所の行きつけのレストランで、彼女とささやかな「最後の晩餐」をすることになっている。既に朝出掛ける前にレストランの予約をしていたので、帰ってから着替えをして、ホテルのレセプションで彼女と待ち合わせ。
 ひとりでレストランに行くことはなかなか難しいことでもあり、チナツさんはウキウキ。私達も一緒にじっくりお食事が出来て嬉しい。彼女とはここでお別れなので、四日間の様々な出来事を語り合い、名残惜しい。楽しい雰囲気と美味しいお食事にすっかりワインがすすみ、どちらからともなく「また一緒に来ようね!」と言い合った。

チナツさんとの最後の晩餐は近くのレストランLa Petite Courへ。私とチナツさんのメインは海老の姿焼きに海老味噌のソース、河村は鴨。ガメイ種の赤ワインも大変美味でございました。


***「買付け日記」は後編へと続きます。***