〜前 編〜

■11月某日 曇り

 ロンドンに飛行機が到着したのは午後4時半過ぎ。でも過密なヒースロー空港のこと、エプロンに機体が着いた頃にはとっくに5時を回り、外は「この国はもう夜ですか!?」と言いたくなるほどの真っ暗闇。そうだった、11月のロンドンはいつもこんな風だった。晩秋から冬の間のロンドンは本当に日が短いのだ。ロングフライトの疲れからちょっぴり暗い気持ちでイミグレーションへ向かう。

 悪名高いイギリスのイミグレーションは、今日も長蛇の列。いったい何百人の人が並んでいるだろうか。不法滞在や不法労働を取り締まるための厳しいチェックなのだが、いつもこの長蛇の列を目にすると、「わざわざこんな国で働かないってば!」とつい呟いてしまう。(だってこの国の冬と来たら極寒なのだもの。)でも大丈夫。私達は登録してある瞳の光彩の認証装置Iris(アイリス)を通るから、イミグレーションの列に並ぶ必要がないのだ。アイリスの機械を通り抜けるのは1〜2秒ほど。傍らの長蛇の列を尻目に、今日も機械に視線を合わせるだけで「ピッ」という音と共にゲートが開いて自由の身になるはずだったのだが…。今日は魔法の扉は開かず、「イミグレーションのゲートへ並んで下さい。」と冷たい機械のアナウンスのみ。河村がやってみても同様で、しかも付近には係員の姿もない。仕方なく、嫌々何百人かの長蛇の後ろに着くことに。

 並んだまま延々と待ち続けること優に1時間。やっと順番が回ってきた。イミグレーションの係官は若いインド系の男性で珍しくとても感じがいい。入国についてのやり取りの後、「今日はアイリスが通れなかったんだけど、なぜ?」とアイリスを登録した紙を見せながら尋ねると、「これは期限が切れたので、イギリスから出国する時にもう一度登録して。登録はヒースロー空港とガトウィック空港と…」と親切に教えてくれた。どうやら、アイリスの資格が継続する半年に一度以上イギリスに来ていても、最初に登録してから2年たつと更新しなくてはならないらしい。思わず「それって空港だけなの!?」と意地悪く切り返してしまった私。ロンドンから入ってパリから帰るパターンがほとんどの私達にとって、イギリスの空港で登録するのは至難の技。そのために買付けのスケジュールを大幅に変更しなければならない。そんな私達の事情が伝わったのか、「そうなんだよ。空港だけなんだ。良い旅をね。」と係官の彼から困ったような笑顔で送り出された。

 イミグレーションで余計に時間がかかったお陰で、いつものように空港から乗ったタクシーは、ロンドン市内へ向かう車でいっぱいのM4(ヒースロー空港からロンドンセントラルへ向う高速道路)の大渋滞に突入!「ほんとにロンドンに着くんだろうか?」と気弱になるほど膨大な時間とお金をかけて常宿のフラットにたどり着いたのは午後8時過ぎだった。あぁ、4時半にはヒースローに着いていたはずなのに…。

いつも滞在しているフラットの近所でみつけた黒猫。窓辺にじっとたたずむ彼(彼女?)はなかなかの存在感。アンティークと思われるアイアン製なので、たぶんとっても重いはず。

■11月某日 晴れのち曇り
 ロンドンからコッツウォルズのショウグラウンドに出掛ける今日は朝からパディントンに向かう。ブリティッシュレイルのパディントン駅から温泉で有名なバースを経由して2時間半、往復5時間の旅は一日仕事。2〜3時間に1本という超ローカルな列車の時間を考えると、向こうに滞在出来るのは4時間弱。今日もハードな一日だ。

パディントン駅に隣接するショッピングモール。いつもここにあるPAULでバゲットサイドを買い込んで出掛けるのが恒例。左側にチラッと見えている枠のようなものは「クルクル寿司」です。

 バースから乗り換えてショウグラウンドに一番近い駅はほぼ無人駅。ここから会場まではタクシーしか手段がないため、昨日ロンドンに着いてから電話でタクシーは予約済み。いつも予約しているタクシーは限りなくおばあちゃんに近いおばちゃんドライバー。「肝っ玉母さん」風の豪快なキャラクターに細心の安全運転が気に入っている。今日もちゃんと駅で待っていてくれて、タクシーに乗せられるやいなやアンティーク談義を聞かされる羽目に。これでおばちゃんはなかなかアンティークに詳しいのだ。「eベイのオークションを知ってる?」と尋ねられ、「う〜ん、知ってるけど使ったことはないわ。」と答えると、「そうね。ああいうのは感心しないわね。アンティークは目で見て触ってみなければ。」と厳しいご意見。最近はアンティークの家具が好きという彼女、自分達が小さいアイテムを扱っていること、ジュエリーやレースの他にソーイングツールを扱っていることを話すと、「日本のレイディ達も手芸が好きなの?」と興味津々だった。そんな事をおしゃべりしているうちに会場に到着。帰りのお迎えもお願いしてタクシーを降りた。
 会場に着いたものの、ゲートの開場は約50分先。開場まではひたすら待つのみ。ロンドンの北西にあたるこのあたりは晴れていてもロンドンより幾分空気が冷たい。今日は「覚悟の厚着」でやって来たのだ。

ビートルズの“The Long And Winding Road”を口ずさみたくなるような丘陵地帯。晩秋になってもイギリスの芝は青々としています。

 定刻通りにゲートが開き、長い列を成して待っていた人々は一斉にゾロゾロ会場に吸い込まれていく。まず私達が向かったのはソーイングツールを扱うディーラーの所。まだ誰も来ないうちにここで一番良い物を手に入れようという魂胆だ。さあて、今日の収穫は如何に?
 いの一番に向ったソーイングツールを扱うマダムはまだ商品を並べ中。そんな彼女に無理を言って、気になるアイテム色々を出して貰い一点ずつチェック。チェックしてみると意外に状態の良いものが少ない。そういうものはマダムに「ゴメンナサイ。」とさっさと返し更にチェック。本当に自分に必要な物だけを手に入れ、次の場所へ。

 ここは珍しくソーイングツールを扱うディーラーが何軒か出店している私のお気に入りのフェア。最初のマダムが終るとすぐ次のマダムの元へ。彼女も長年ソーイングツールを専門に扱っている私のお目当てのマダム。ロンドンではソーイングツールを専門に扱っているディーラーはほんの一握り、当然扱う量も本当に少ないのだけど、こうした地方のフェアではロンドンとはまた違ったディーラーに巡り会えるのもわくわくする。
 いつもはマダムひとりで相手をしてくれるのに、今日のマダムのブースには親族だろうかアシスタント女性やら男性やらがいてきめ細かに接客してくれる。「これ見せて!」と言えばすぐにケースから出してくれる。打てば響くところが嬉しい。

 で、今日出てきたものはというと…向こうのケースを見ていた河村がケースの中を指さしている。「え?何?何?」とそちらを覗くといつも探しているケース付きのシルバーのはさみが!ドキドキしながらすぐに出して貰い状態を確認する。まず私が見て、もう一度河村に手渡し、二人してチェック。はさみ自体も状態が難しいもののひとつだが、こうしたケース付きの場合はケースにダメージがある場合が多いので要注意。いきなりの出物にテンションの上がる私達、様々な形のマザーオブパールの糸巻きと一緒に手に入れた。

 このフェアでの目的はもうひとりのお気に入りディーラー。決して高価なジュエリーばかりだけでない、マダムの美しいものにこだわった品揃え、一捻りあるセレクトは昔から憧れの的だったのだ。大昔は手が届かない憧れのディーラーだったのだが、ここ最近は「欲しい物は仕入れる!」と対等な間柄になり、遠慮することなく気になったものはケースから出して見せて貰っている。今日も彼女の華やかなガラスケースの中を覗き込む。

 今回、ジュエリーなどが入っているケースに欲しいものはなかったのだが、もうひとつの香水瓶がびっしり入っているケースの中にプリンスマチャベリでも希少な赤いボトルとごく小さなサイズのボトルを発見。「あら、マチャベリも扱うのね。」と言いつつ、早速見せて貰い状態を確認。マチャベリの香水瓶はスタンダードなサイズをひとつ持っているので、三つ並べたら素敵なはず。今回はこちら2点を連れ帰ることに。

 本当は5時でクローズする今日のフェアだが、クローズまでいるとこのド田舎では乗る電車が無く、夜9時頃にしかロンドンへ帰ることが出来なくなってしまうため、早めに会場を後にしなければならない。とにかく大急ぎで見なければならないのだ。会場の中を早足でのっしのっしと歩き回る。

 今日、他に出てきたのは繊細なビーズでイニシャルが縫いつけられたニードルフォルダーやスティレットなどのソーイングツールや、ジュエリー少々。久し振りに仕入れたカメオのブローチはギリシャ神話のペルセウスとアンドロメダの物語を彫り出したもの。美しい彫刻はもちろんのこと、そのストーリーが感じられる図柄に心惹かれた。もうひとつ気に入ったジュエリーは美しい色合いのアメジスト。シードパールを周りにぐるりと配したアメジストのブローチはヴィクトリアンらしいアイテムだが、このシードパールに大小のサイズ違いを使った繊細な細工の魅力のあるもの。自分の誕生石でもあるせいだろうか、どうもアメジストに弱いのだ。

 タクシーの時間が近づいてきた。まだまだ買付けをしていた私達は大急ぎでドライバーと約束をしていたゲートへ。帰りもおばちゃんドライバーのタクシーに揺られてブリティッシュレイルの駅へ。おばちゃんから「どんな物を仕入れたの?良い物あった?日本での仕事は最近どうなの?」と次々聞かれるのだが、集中力を使い果たし疲労困憊で返事もしどろもどろ。ただでさえ英語が得意でない私、ぐったりと疲労した頭の中で英語を組み立てて話すのはとても億劫で、心の中で「お願いだ〜。何も聞かないでくれ〜。」と叫んでいた。

この通りイギリスの田舎の駅ってな〜んにもないのです。冬場の寒さ、寂しさは格別です!

 無事駅に着き、やや遅れて来たものの目的の列車に乗ることが出来、このまま問題なくロンドンへ帰ることが出来ると思ったのだが…そうは甘くはなかった。約1時間、たった二両しかない列車に乗って温泉で有名なバースまで向かい、そこでロンドン行きの列車に乗り換えることになっている。バースーロンドン間は、週末で混み合うことを予想して座席の指定も取っていたのだが、なかなかバースにたどり着かない!このままではバースでの待ち合わせに間に合わず、ロンドン行きの列車に乗り遅れてしまう。ようやくバースへ着き、慌てて列車から降りてロンドン行きの列車の出るホームへ走って向う。一度到着ホームから階段を駆け下り、隣の出発ホームへ駆け上がると、ホームにはまだ列車が!「まだ間に合う!」とドアに向ったその時。ホームにいた駅員から“Too late!”と叫ばれ、阻止されてしまった。目に前にいるのに行ってしまう列車。「あぁ〜!」

 結局40分後の次の列車で帰ったのだが、週末の夕方、バースからの列車の中はもの凄い混雑で満席。せっかく日本からインターネットで座席指定をしてあったというのに、泣く泣く立ったままロンドンまで帰ることに。どうも今回のイギリスはアンラッキーなことが続くようだ。

■11月某日 曇り
 今日はロンドンでの買付け。ロンドンで買付けできるのは今日一日だけ、限られた時間内で買付けをし、買付けが済むとパリへ向うため今日も気が抜けない。朝5時起床、今日も朝早いのだ。

 数年前まで、イギリスで重点的に買付けしていた折には、ロンドンからカントリーサイドのショウグラウンドに泊まりがけで出掛けたり、ロンドンで毎日マーケットを巡ったり、長い時にはイギリスに二週間ほど滞在していたこともあったのに、最近はイギリスのショウグラウンドやロンドンのマーケットの事情が変わり、本当に短時間の滞在。以前は買付けの合間に、近くのハロッズへ遊びに行ったり(ハロッズは滞在しているフラットから自転車で行ける距離のご近所デパート。)、フランス人が多く住むフラムロードあたりの洗練された街並みを散策したり、近所にあるヴィクトリア&アルバートミュージアムにゆっくり出掛けたり、ナショナルギャラリーへお気に入りのレンブラントの自画像に会いに行くこともままならず淋しい。次回は少しゆっくり滞在したい。
 でも今日は、事前に連絡をした付き合いのあるディーラー何人かから期待の出来る返事を貰っている。さぁ。今日は何が出るか?まだ真っ暗な早朝の街を出掛ける。

 まず向った先は地金もののジュエリーを扱うマダムの所。チャーミングなジュエリーが比較的リーズナブルなお値段で仕入れられるここは朝イチで立ち寄る場所のひとつ。マダムは私達の顔を見るやいなや、「こんなのがあるんだけど。」とケースの中からリングをひとつ。「こんなの好きでしょう?」とにっこり。確かに前回仕入れた物とよく似たタイプ。「前回も買ってくれたでしょ?」ちゃんと私達の仕入れた物を覚えていてくれたのね。今回はマダムおすすめのリングの他にもいくつか、ちょっぴり大きめのダイヤのリングも。

 次の年配のマダムはジュエリーでも、私の好きなヴィクトリアンの細工物を得意にしている。21世紀の現代、ヴィクトリアンの小さな石を組み合わせたチマチマした細工物のジュエリーにこだわってセレクトしているディーラーは意外に少ないのだ。(というか、彼女のセレクトがたまたま私の好みにぴったりだからかもしれない。)そんな彼女のケースの中に今日はとても繊細なリガードリングとシードパールとアメジストを組み合わせたパンジーリングを発見!どちらもヴィクトリアンならではのロマンティックジュエリーだ。今まで横一文字に石が並ぶリガードリングに惹かれたことはなかったのだが、今回はその繊細さにコロッといってしまった私。自分の指にはめてみてチェック。「う〜ん。他のリングとの重ねづけも良いかも。」

 ロンドンでは数少ないソーイングングツールを扱うディーラーは貴重な存在。何か仕入れる物はないものかと商品を物色していると、顔馴染みのマダムは何やらテーブルの下からタッパウェアを取り出した。(ロンドンのディーラーは、ジュエリーだろうがソーイングツールだろうが大切なものは皆タッパウェアに入れているところがおかしい。)どうやらお馴染みのディーラーが来るとは見せているらしい。このシチュエーション、きっとタッパの中から何か特別なものが出てくるはず!タッパを開け、大切にプチプチで包まれたアイテムがゴソゴソと出てきた。その何番目かに出てきたのは大振りのパレロワイヤルのタティングシャトル!大振りなものは常に「出てきたら絶対欲しい!」と思っている物のひとつ。しかもこのシャトル、今まで扱った事のないパターンでとても細かい模様がいちめんに彫刻された美しいもの。「あぁ、出会えてラッキ〜♪」とすかさず自分達のものに。

 今日の大きな目的のひとつ、お馴染みレースディーラーは事前にメールで詳しくリクエストを伝えたディーラーのひとり。それに応えて詳しく返事をくれたのも几帳面な彼らならでは。彼らのメールではどうやら該当する物が何点かあるらしい。何点かあるということは選ぶほどあるということ。今回かなりの期待を込めてやって来たのだ。
 私達のお相手をしてくれたのはよく知っているアシスタントの女性。私がオーナーからメールを貰っていることを伝えると、早速レースの入ったボックスを出してくれた。中を開けると…凝った細工のハンカチが何点か。一応「触っていい?」と声を掛けてから一枚一枚丁寧に広げていく。ホワイトワークのハンカチ、ポワンドガーズのハンカチ、フレミッシュボビンの縁が付いたちょっと変わったハンカチ、それぞれ個性的な様々なレースが。特に薔薇柄のホワイトワークのハンカチとポワンドガーズのハンカチに惹かれる。ありそうで無い薔薇柄のホワイトワーク、そしてポワンドガーズはレースの部分にイニシャルと「コロネット」と呼ばれる王冠マーク。レースにイニシャルや王冠マークが組み込まれているデザインは今まで見たことがない。河村とふたりで真剣に相談の上、今日はこの2点をチョイス。アシスタントのマダムにお礼を言い、「オーナーにも宜しくね。」と言いながら、「また今度。」とお別れ。上質なレースが出てくると、お仕事を忘れついつい興奮してしまう。

 もう一軒のレースディーラーも私の大事なビジネスパートナー。前回タティングレースのパラソルが出てきたここには、もちろん「パラソルがまたあったら取って置いて!」とメールしてある。が、そうそう出てくることのないタティングレースのパラソル、今回は残念ながら巡り会えず…その代りに出てきたのがパラソルと同じ古い編み方で作られた大振りな襟だった。「あら、タティングの襟!」と声を上げると、「そうなの。こんな大振りなのは珍しいわよね。」とオーナー。様々なモチーフが細い糸で編まれたタティング、すかさずその襟をキープし、他にもゴソゴソ探していると…思いがけず古いレース、ポワンドネージュが出てきた。「あら、こんなのどこから出てきたの!?」と独り言。普通の家から突然18世紀やそれ以前のレースが出てくることはまずない。このレースはきっと誰かコレクターが手放したに違いないのだ。今回はこの2点を入手。良いレースを手に入れ、ちょっぴり肩の力が抜ける。

 今日は他にも可愛いダイヤのペンダントやシードパールのネックレスを仕入れご機嫌。朝から歩き回ること既に6時間。あぁ、この仕事って本当に「体力あるのみ!」なのだ。でも、こうして歩き回って、苦労してみつければみつけるほど、どのアイテムも愛おしい。いつもの習慣で、美味しいキャフェで一息入れる。ここで仕入れたアンティークについて河村と話すのも楽しみのひとつ。一服した後は、ユーロスターに乗る前に荷物をピックアップするためにフラットへと戻る。

 大小のスーツケースふたつをゴロゴロしてフラット近くの大通りへ。そこでタクシーを拾って、ユーロスターの発着するセントパンクラス向うのだ。それにしても今回のイギリスは本当に慌ただしかった。途中、グリーンの美しいハイドパークを通り抜け、公園をのんびり散策している人々を尻目に「次回こそはもっとゆっくり滞在したい。」と心に思う。セントパンクラスの駅では、さっさとチェックインし、キャフェでいつものように河村とグラスワインで乾杯。フランスへ向う前に、「イギリス編お疲れ様!」とここで白ワインを飲むのが恒例なのだ。

 パリに着いたのはすっかり暗くなってから。でもそんな夜の方がいっそうパリの街が美しく見えて(なにせ汚い物は夜の闇で見えなくなるし。)好きだったりする。パリ北駅からいつものホテルへ向う道すがら、タクシーの車窓から見えるお馴染みのパリの街に、ほっとするやらうっとりするやら。ホテルに着くとレセプションのムッシュウから「よく来たね。元気だった?」とにっこり微笑みかけられてほっとする。

 ホテルに荷物を置いて、今度はご近所の散策へ。不思議とロンドンにいる間は他のイギリス人と同じくさっさと家に帰り、パリにいるときにはフランス人と同様に夜でも散歩に出掛けるのが好きな私達。もちろん行き先はお馴染みの近所のキャフェ。お店に入る前からガラス越しに私達をみつけたギャルソンの彼とは、お店に入るやいなやガッチリ握手。早速河村はキャフェ・オレ、そして私はおすすめのボジョレー・ヌーボーをあてがわれ上機嫌!日本で飲むといまひとつのボジョレー・ヌーボーだが、ここフランスで飲むとフルーティーでフレッシュ。「美味いよ〜!」と叫びながらゴクゴク飲んでしまった。

パリの中でも商業地域とされる右岸では早くからクリスマスイルミネーションが見られますが、私達の滞在する左岸ではまだチラホラ。街中にクリスマスイルミネーションが灯るのは12月に入ってからのようです。そのかわり、パリでは1月いっぱいクリスマスバージョンの街が楽しめます。

***買付け日記は後編へと続きます。***