ルイ15世に由来するレースとほぼ同じ模様!
マーレット・シメオン所蔵の18世紀初頭のボビンレース
ブリュッセルレースはフランドルを代表するボビンレースとしてあまりにも有名。こちらはイギリスのテキスタイルデザイナーでもあり(彼女のデザインしたテキスタイルはロンドンのヴィクトリア&アルバートミュージアムにも収蔵されています。)、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートにおいて教鞭を執っていたこともあり、またレースコレクターとしても、レース研究者としても著名な(“History
of
Lace”の著者でもあります。)マーガレット・シメオン(1910年〜1999年)のコレクション、「ポワン・ダングルテール」とも称される18世紀初頭のブリュッセルレースのボーダーです。
彼女が収集したレースのコレクションは1992年にロンドンのオークション会社フィリップスでオークションにかけられ、このレースも、その時にオークションに出品されたもののひとつです。
インド更紗から影響を受けたと思われるシュロや花々の模様はその時代らしいのですが、何よりも私が興味を持ったのは、フレームの中に細工されたそれぞれ矢で射貫かれた燃えるダブルハートの模様です。元々キリスト教における「ダブルハート」の文様は、「聖心(キリストの心臓)」と「御心(聖母マリアの心臓)」の密接な結びつきを象徴しています。また、後の時代には、「結婚」や「婚約」などの「愛の違い」や、「魔除け」を意味しました。このようなモチーフなどから、このレースは教会の祭壇飾り、もしくは司祭服のレース飾りだったのではと思われます。
インド更紗を思わせるエキゾチックなシュロやお花模様、ひまわりや羽根を思わせる模様が織り出され、そうしたモチーフが極小のピコットが付けられた繊細なバーでつなげられています。ほぼグラウンドの無い密度の高いレースで、透けるほど薄いトワルの部分からもこの時代ならではの非常に細い糸で織られている事が分かります。当時、こうした繊細なレースを織ることが出来る優秀なレース職人がいたことはもちろんですが、そのレースに使うための極細の糸を撚ることが出来る職人も存在したということだと思います。(当時、レース糸に使われていた麻の品種は、その後絶滅してしまったため、現在では存在しません。)
上の端部分、下の極小ピコットの付けられたコードは後の時代に付けられたものです。約三百年以上前のレースとしては大変良好な状態です。
ボーダーの右端には、マーガレット・シメオン自身がコレクションのレースを識別するために付けた「BRUSSELS
about 1715 Bobbin made
4.89」とペンで記した紙タグが縫い付けられていて、これもアンティークレースでは貴重なアイテムです。
その細工の繊細さはこの時代ならでは。手に取ると、いつまででも眺めてしまいます。(私は、このような繊細な細工を眺めているだけで、幸せな気持ちでいっぱいになります。)
後日、このレースと同じ模様のレースを、「ダイアン・クライスコレクション
アンティークレース展」のカタログで見つけました。カタログ53ページに掲載されている「53.ロイヤル・ウェディングのためのフラウンス(ルイ15世に由来)」のレースです。こちらは巾が63cmとなっているので、さらに巾広。ルイ15世とマリー・レクザンスカの婚礼に由来するレースです。(このカタログは、店頭でもご覧いただけます。)以上のことから、フランス王室のレースと同じ工房で作られたものと思われます。
18世紀のレースは昨今非常に貴重になってきています。19世紀よりも前のレースがお好きな方にはおすすめの、古いレース特有の味わい深い
レースです。
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