極小のピコットとコーラル模様のヴェネチアンレース
ポワン・ア・ラ・ローズのボーダー
15世紀末から16世紀初頭にイタリアのヴェネチアでニードルポイントレースが考案されました。17世紀になるとプント・イン・アリア(空中レース)が発明され、その後プント・イン・アリアからグロ・ポワンと呼ばれる立体的なレリーフを持つヴェネチアンレースへと発展しました。17世紀中頃、最盛期を迎えたヴェネチアンレースは、ヴェネチア商人の手で北の貿易都市アントウェルペンを経てパリ、ロンドンなどヨーロッパ中に広まりました。
このレースは、17世紀末と思われるのヴェネチアンレースのボーダーです。同じヴェネチアンレースのグロ・ポワンよりモチーフもずっと小さくて繊細、グロ・ポワンと比べるとかなり女性的にアレンジされた印象のレースです。また、当時「ポワン・ア・ラ・ローズ」という名前はなく、19世紀になってから、「17世紀のレース」のテキストに「ポワン・ア・ラ・ローズ」の名前が用いられるようになったのが、この名称が使われるようになった始まりです。
このポワン・ア・ラ・ローズは、立体的な大きなレリーフが特徴のごつごつしたグロ・ポワンに比べると、ずっと軽やかで繊細、洗練された雰囲気のレースです。初期のレースらしい素朴な雰囲気がありながら、信じられないほどの繊細さを併せ持ったレースです。極小のピコットの付いたグランドはすべてブランケットステッチで覆われていますが、特筆すべきは様々な形の立体的な小さなお花の細工で、その限りなく細かな仕事ぶりは、ルーペで眺めると感動を覚えます。ヴェネチアンらしい珊瑚をかたどったコーラル模様で、模様が繰り返しではない点も、この時代のレースの特徴をよく表しています。ルーペでじっと見入ると、当時の人々の忍耐強さや、細やかな感性に、ただただ頭が下がる思いです。
こちらはレースの専門書「レース
歴史とデザイン」の56ページに非常に似通ったレースが掲載されています。
レジエ(上端)に僅かに糸が外れている箇所はあるものの、300年以上前のレースとしては大変良好な状態です。19世紀よりも前のレースがお好きな方にはおすすめの、古いレース特有の味わい深いレースです。
ヨーロッパでは、こうしたレースは財産のひとつとみなされ、代々一族の女性達が受け継いでいくことが常でした。17世紀末から18世紀初頭の、300年以上前の非常に繊細な作りにもかかわらず、傷みのない大変良好な状態です。この時代のこのクラスの上質なレースが巡り会うことは、21世紀の現代では非常に稀です。19世紀よりも前のレースがお好きな方にはおすすめ、古いレース特有の味わい深いレースです。ご希望の方には額装も承りますのでお気軽にご相談下さい。
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