目を見張るばかりの繊細さ、18世紀前期のゴージャスなアンガシャント
17世紀中頃、イタリアのレースは、プント・イン・アリアからグロ・
ポワンと呼ばれる立体的なヴェネチアンレースへと発展しました。同じ頃、ルイ14世の宰相コルベールは、フランスでも人気だったイタリアのレースに対抗す
るため、ヴェネチアとフランドルから熟練したレース職人を呼び寄せ、1665年8月5日にケノア、アラス、スダン、ルーダン、ヤック、シャトー・ティエ
リー、アランソンに王立レース製作所を創設し、今までにないまったく新しいレース、ポアン・ド・フランス(「フランスのレース」の意)を作らせることを始
めました。
元々は、グロ・ポワンのコピーから始まったこの新しいレースは、グロ・ポワンから厚みのあるレリーフを取り除き、細かいピコットや、緻密なボタンホールス
テッチからなる六角形のグランドに整然とモチーフを並べ、フランスの繊細な美意識を表現した女性的な雰囲気を持つレースとなりました。
このレースは非常に成功をおさめ、ついには近隣のベルギーやイタリアからこのレースを模倣されるまでに至ったのですが、他の国々では既に追いつくことは出
来ませんでした。そして、このポワン・ド・フランスこそが、後の時代、ポワン・ダルジャンタン(アルジャンタン)、ポワン・ダランソン(アランソン)やポ
ワン・ド・スダンなどのフランスレースへと発展していく基となったのです。
こちらは、上記のような経緯を経て、18世紀初頭に作られたポワン・ド・スダン、ドレスの袖口を飾った繊細で豪華なアンガジャントです。ポワン・ド・スダ
ンの特徴でもあるインドやペルシャの影響が感じられるエキゾチックな植物模様や愛らしいお花がつらなった模様が見られる興味深いレースです。模様の内側に
は様々な繊細な地模様、レースの縁や模様のアウトラインには白馬の尻尾の毛が縫い込まれています。
模様と模様はボタンホールステッチで覆われた六角形のグランドでつながれていて、グランドに極小のピコットが付けられていることから、このレースは
1710年〜1720年頃の物だと思われます。(ポワン・ド・スダンは1740年代以降、グランドのピコットが簡略化されていくため。)
後の時代に両端が始末されていることから、何か他のドレスの装飾に使われたものと思われます。こうしたレースは財産のひとつとみなされ、代々一族の女性達
が受け継いでいくことが常でした。300年程前のレースとは思えない大変良好な状態です。この時代のこのクラスの上質なレースが巡り会うことは、21世紀
の現代では非常に稀です。19世紀よりも前のレースがお好きな方にはおすすめ、古いレース特有の味わい深いレースです。ご希望の方には額装も承りますので
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