■8月某日 曇り
 買付けを思い立ったのは7月中旬のこと。ふと調べてみた自分のマイレージが、ヨーロッパ往復2回分貯まっていたことから、「それでは行ってしまえ!」とばかりに突如計画!8月末から大阪の阪急百貨店「素晴らしき時代マーケット」、JR名古屋タカシマヤ「フランス展」とふたつのデパートのお仕事が続くことから、4泊、フランスのみ、今回もひとりで買付けに行くことに。

 夏といえばバカンスの季節。ご多分にもれずフランスのアンティークディーラー達も数週間バカンスに出掛けることが多い。計画した8月上旬は、フランスのディーラー達も居るか居ないかのギリギリのシーズン。航空券を予約する前に、主だったお世話になっているディーラー皆に、「その頃居る?」とメールで連絡。主要なディーラー達が皆バカンス前であることを確認し、そこでようやく航空券とホテルを予約した。

 今回は非常に短い旅程のため、「パリで夏休み気分!」などと軽い気持ち出発!出発前の日本は連日30℃を優に越える暑さのため、「この時期、まさか革靴はいらないよね?」と自問自答し、スニーカーは荷物に入れたものの、履き慣れたサンダルを履いて出発。機内が寒いことを想定して、靴下やスリッパ、上着にストールも荷物に入れていたものの、それでは足りないほどの寒さ。(前回、オランダ泊まりになったこともあり、化粧品やTシャツも手荷物にしっかり入れていった。)余分にブランケットを持って来て貰ったが、それでもロングフライトを震えながら過ごし、無事パリに着いた時には、すっかり身体が冷えきっていた。

 テロで厳戒態勢のフランスなのに、イミグレーションは毎度のことであっさり通過。すぐに預け入れたスーツケースも出てきて、何かと問題のあるRER(パリ市内へ向かう郊外高速鉄道。頻繁にストライキに遭遇している。)も今日は平常通り運行。前回、オランダ泊まりになったトンデモ買付けを思い出すと、あっけないほどスムーズに、思っていたよりも早めにパリ6区のいつものホテルに到着した。パリの気温は24℃、サンダルを履いてきたことをちょっぴり後悔。

前回のことを思うと、あまりにスムーズで気が抜けるほど。いつものホテル、いつものオデオン座側の部屋に落ち着いてひと安心。真夏のパリ、午後10時前でもこの明るさです。

■8月某日 晴れ
 買付け第一日目は、前回オランダで足止めになった際に、シャルル・ド・ゴール空港から直接スーツケース2個と共にタクシーで乗り付けたディーラー。今回もアポイント、というかバカンスに行っているか、行っていないか確認のうえ、やって来たのだ。(彼女は今日が営業最終日、明日からバカンスが始まるのだった。)

 挨拶を済ませると、オランダ泊まりやストライキ、セーヌ川氾濫で、前回私が大変な目に遭ったことをよく覚えていた彼女の口から、「そういえばつい最近、8月に入ってからもエールフランスはストライキをやっていたのよ!」と驚きのひと言。エールフランス、国がテロで大変なことになっているのに、8月になってもまだそんなことをしていたとは!

 さて、今日も私のために用意しておいてくれた大きな袋の中から、ひとつひとつ商品をひろげていく。何しろ膨大な量なので、すべてを見るだけで何時間もかかる。商品の山を、「決定!」と「考え中」と「いらない物」に分けていく。途中、「素晴らしいレース」やら、「あなたが好きだと思って取ってあったの!」というブツがアクセントに入る。

 今回の「素晴らしいレース」は前々からお願いしていたポワン・ド・ガーズのハンカチ。何枚か出てきたハンカチの中に素晴らしい細工の物が!幾度か彼女からハンカチを譲り受けているのだが、今回のハンカチはその細工がひときわ繊細で、手にしたまましばし呆然と見入ってしまった。

 そして、私のために取って置いてくれたボックスふたつ。ひとつは以前から話に聞いていたエンジェル模様のメタル製のボックス。よく時計を飾るウォッチケースでエンジェル模様の物があるのだが、それをボックスにしたような雰囲気。内側は可愛い花模様のシルク布が張ってある上質な箱だ。見せてくれる側の彼女も、見せて貰う側の私も、声を揃えて「こんな箱見たことない!」とため息。
 もうひとつは素晴らしく状態の良いシルクベルベット張りのジュエリーボックス。最近では見つけるのが難しいベルベットのジュエリーボックス(あってもベルベットがハゲハゲでツルツルテンだったりする。)、鍵が付いている点もポイントが高い。それらの物は迷わず「決定!」の山へ。

 もうひとつ、嬉しかったのがほぐし織のシルク地。「もう今じゃこんなの無いわよ。」と言う彼女に深く頷く私。ほぐし織のリボンはたまに出てくることはあっても(それでも珍しいのに!)、生地となると本当に珍しい。昔々(たぶん20年近く前)、ロールになったデッドストックのほぐし織のシルク地を見たことがあったのだが、その時、まだ若かった私には高価過ぎて買えなかったことをよく覚えている。買えなかった物ほどよく覚えているのだ。今でも高価だったが、それでも迷わず「決定!」の山へ。

 ランチを挟んでもまだまだ商品の山は減らない。その後もレースボーダーの山を崩し、ホワイトワークの山にトライ。ドイリーの詰まった箱も物色し、お花を選び、すべてを終えたのは夕方近くだった。

 買付けたばかりの巨大な荷物を背負い(あまりの重さに肩に掛けられず、バッグを背中に背負う感じなのだ。)、帰宅。途中、いつも立ち寄るジュエラーに寄ろうとしたものの、「8月末までバカンスで休み」の案内が張られていた。そう、フランスでは数週間の夏休みは普通なのだ。よくお総菜を買うジェラール・ミュロも、近所のレストランもみんなしばらく夏休み。店先には"Bonne Vacance"の張り紙が張られている。キャフェで過ごす人々も、表のテラス席に皆陣取って、開放感いっぱい。バカンス時期でどこか浮き足立っているように感じられる。そんな中、荷物を背負ってひたすら歩く私だけがいつもと何一つ変わらないようだ。

ドラジェの専門店を発見!これはきっと男の子のお誕生のためのドラジェですね。なんだか夢がありますね。


いつもウィンドウを覗く食器のお店も、この時期は涼しげなブルーのグラデーションでディスプレイ。(でも、バカンスでお休みでした!)

■8月某日 曇りのち晴れ
 今日は早朝から出発!出掛けに今日の気温をチェックすると、早朝は13℃、昼間は27℃の予報。「13℃?それって冬の気温じゃん!」とたじろぐ私。慌てて持って来たユニクロの薄手のダウンジャケット(小さく折りたためて便利なため、買付けの必需品。8月の買付けだというのに、そんなものまで持って来たのだ!)を着込み、窓から身を乗り出すと、流石にそれは着込み過ぎで、またすごすご脱いで、ジャケットを着て首の周りにグルグルとストールを巻き、今日はサンダルではなくスニーカーを履き、気合いを入れて出掛けた。

 で、いつものバス停まで歩いて出掛けたところ…バス停が無い!!バカンス時期にはよくあるのだが、道路工事などでバスルートが変わることがあり、今回もその工事期間に当たってしまったのだ。慌ててひとつ手前のバス停まで早足で歩く。(今までにも、そういうことに遭遇したことがあるため、付近のバス停もチェック済みなのだ。)が、バス停まではたどり着いたのだが、ただいまバカンス期間とあって、次のバスが来るのは約30分後。(パリの市バスは、8月のバカンス期間は、バカンス運行でいっきに便数が減ってしまう。)これではいったいいつ目的地にたどり着けるか分からない。
 しばらくバス停の前で待ってみたものの、「こんなの待ってたらダメだ!」と急遽メトロで行くことに変更。今度はまた早足でメトロの駅へ。無事すぐ来たメトロに乗ったものの、ジリジリと慌てた気持ちで乗ったせいか、途中、乗換駅を間違った挙げ句、結局ほぼバスと同じ時刻に到着。いったい何をやっているのだか?

誰もいない石畳の道。バカンス時期、早朝のパリは静か。こうした石畳の道は最近では少なくなりました。

 まず最初に向かったのはアポイントを入れてあった彼女のところ。いつもお世話になっている彼女は、急遽買い付けに行くことになった際、最初にメールでパリにいるかどうかを問い合わせたひとり。「大丈夫!その日までパリにいるわ。」という返事を貰って、航空券のチケットを手配したのだ。実は、彼女は翌日から地方にバカンスに行くことになっていて、今回ギリギリで間に合ったのだ。

 今日も彼女を訪ねて、ビズーの挨拶を交わすと、早速「マサコの箱」が出てきた。ギッシリ入っている物を、ひとつひとつひっくり返し、チェックしていく。何枚かのシルク生地、ここ最近シルクの織り生地を見つけるのはとても困難になってきているので、最初に出てきてくれてとてもありがたい。そしてコットン生地も。お花模様の状態の良いフレンチプリントとエンジェル模様のトワル・ド・ジュイ。エンジェル模様のトワル・ド・ジュイは、昔から何度か扱っている生地だが、状態の良く大きさのある生地は久し振り。そして、種類別に仕分けされた小さなボタンの入ったボックスからお人形向きの物をセレクト。同じくお人形向きのシルクのロココも出てきた。

 ボックスの底の方には薄紙に包まれた何かが。薄紙を開けると、トップにはエンジェルのデコレーション、くるくると渦巻き状のメタル製スタンドのスタンドミラーが出てきた。フランスらしいデコラティヴなスタンドミラーだ。フランスらしい雑貨は貴重、「いい感じ!いい感じ!」といただく物の側へ選別。最後にもうひとつボックスのそこに入っていたのは細長い紙包み。ミラーと同じく薄紙に包まれている。不思議な形状に、「何?何?何なの?」とカサコソ開けてみると…木の板に付けられたアイボリーの繊細な細工。それは豪華で美しい薔薇の彫刻と貝を模した彫刻が付けられた聖水入れ。ルーペを使ってダメージがないかとチェックした後、あまりの美しさにただただ眺めてしまった。普段テキスタイル系の物を仕入れることの多い彼女のところからこんな物が出てくるとは!クリスチャンではない私だが、美しいものは、宗教も国境も、そして年代をも超えてしまう気がした。

 彼女と別れた後、もう一軒アポイントを入れたいたマダムのところへ寄ったものの、先客が居て仕事がしづらく、マダムの「なんで帰るのよ!」という冷ややかな視線を感じながら早々に退散してしまった。(後日、私が日本人ディーラーだと思ったその先客は韓国のディーラーだと判明。)

 もうひとり、いつもきちんと手入れされたアイテムを綺麗にガラスケースに並べているムッシュウ、私や私の友人の日本人ディーラーから「綺麗な物を持っているお兄さん」と呼ばれている彼。たびたび奥様のマダムも一緒に店頭に立っていたのだが、しばらく前に彼の元を訪れた私の友人ディーラーが「綺麗な物を持っているお兄さんが居なかったのよ!代わりにマダムと別の男が居たの!商品も違っていたし、いったいどうしたんだろう?」と心配気。私も彼女もいつもにこやかで穏やかなお兄さんのファンだったのだ。(その穏やかな感じから、彼は生粋のフランス人ではないのかも。)別の日本人ディーラーにその話をすると、「あ〜、フランスではありがちな話だね。」との返事。果たしてお兄さんはどこに?

 いた!いた!今日もいつもどおり穏やかな微笑みで!お兄さん居るじゃん!ほっとして商品に集中すると、小さなルルドのスーヴェニールが目に入ってきた。お兄さんにガラスケースから出して貰い、状態をチェックし、今日も優しい微笑みと共にいただいた。これで午前の部の仕事は終了。大急ぎでいつものブーランジェリーでバゲットサンドを仕入れ、ちょうどやって来たバスに飛び乗り、一旦ホテルに退散。

ホテルに荷物を置きに戻って、大急ぎでバゲットサイドにパクつき、早朝の厚着の服装から、夏向きの服装に着替え、次の場所へ。今度はメトロに乗って出掛ける。

 アポイントを入れていないが、毎度立ち寄るジュエラーのマダムのところでは、「ああでもない。」「こうでもない。」と眉間にしわを寄せながらジュエリーを物色。「これいいかな。」と思ったジュエリーは予算オーバーで、予算内に収まるジュエリーには気に入った物が無い。ため息をつきながら、ルーペと肉眼で交互にジュエリーを眺めていると、マダムが奥の引き出しからビニール袋(!)に入ったジュエリーを出してきた。ビニール袋の中は、小袋に分けられたジュエリーが色々。その中から、私が気に入りそうな小さめのジュエリーを選んでくれるマダム。目に留まったのはいくつかのピアス。再びルーペでチェックすると、その中でも特に細工の細かいルビーとシードパールのピアスと、サファイヤとダイヤ、シードパールのピアスが良い!「あるじゃないの!あるじゃないの!」と心の中で叫び、マダムには笑顔で"Merci"とお礼。今日はこのふたつをチョイス。マダムに改めて挨拶をし、ここを後にした。

 綺麗なオルモル製品を扱っているムシュウは私の顔を見るや「今回はひとり?ムッシュウは?」と河村のことを尋ねてきた。「たぶん…東京で一生懸命仕事しているはずよ。」と返事をし、ふたりで笑い合う。美意識の高い彼、こだわりの品々が並ぶガラスケースは充実の品揃えだ。が、毎度仕入れられる物があるとは限らない。まずはじっくり彼のガラスケースを見せて貰うと、「ん?」ケースの中に手頃なサイズのフラワーベース2点を発見。ほぼ同じサイズのため、てっきりペアだと思った私は、「これってペアよねぇ?」と尋ねると彼の答えは"Non" どんなに素敵なフラワーベースでも、マントルピースなどにシンメトリーで飾るフランスと違って日本にはペアで飾るお客様は少ない。そしてペアの方が当然お値段が高くなる。ということで、私は「ペアでない物」を探していたのだ。
 「えっ!?これペアじゃないの?」と私。ケースから彼が出すと、それはオルモルの部分はほぼ一緒だが、ほんの少し高さが違い、グラヴィールの模様も違う。「う〜ん。」ふたつを代わる代わる眺め、手に取り、ひっくり返し…より美しいグラヴィールの方を選んだ。

 いつも覗くお人形のディーラー。ここのムッシュウも、一見さんには素っ気ない扱いなのだが、度々お世話になっている私にはえらく愛想が良い。フランスでは度々あることなのだが、一見さんと常連さんとのあまりの扱いの違いに驚きを通り越して呆れ、笑ってしまうことすらある。とはいっても、お人形を扱っている場所で私が譲って貰うのはお人形のボネ。ここでは毎度ムッシュウの持っているボネの中で一番良い物を選ぶようにしている。今日もケースの中には気に入る物が無かったので、いつものようにムッシュウに「ボネは…?」と尋ねると、ムッシュも毎度のことなので、「ハイ、ハイ」と言うように、いたって普通に奥からボネが出てきた。奥にしまってあっただけあって一番豪華、ここでもまた「そうそう、こういうのが欲しかったの!」と心の中で呟いた。
 ただし、ボネは良い物があるのに、なぜかドレスは気に入った物はない。この辺りがなんとも不思議なのだ。

 散々歩き回った後で、私が立ち寄ったのは日本人リスペクトの男性ディーラーのところ。いつも礼儀正しく、東北大震災直後の仕入れでは、心底心配してくれ、「あの状況で暴動の起きない日本人を尊敬するよ。」と言っていた彼。様々な種類のアイテムを持っている彼だが、たまに細工の美しいソーイングツールを持っていたことを思い出し、立ち寄ってみたのだ。本人不在だったのだが、私がガラスケースの中を覗き込んでソーイングツールを探していると、どこかともなくやって来て、ケースからツールを出してくれた。彼が持っていたツールの中から、フラワーバスケット模様のめうちとニードルケースの、いずれもシルバー素材のツールを選ぶ。特にニードルケースは開け閉めする物なので、実際に開けたり閉めたり、状態のチェックを欠かさない。(ついでにシルバーのホールマークもチェック!)どちらも良好な状態でふたつとも買付け。ムッシュウとは最後に握手をしてお別れした。

 心配していたバカンス時期だが、主だったディーラーは営業していてひと安心。今日も沢山歩き、もう夕刻。iPhoneの万歩計を見ると、なんと2万歩近い歩数。疲れた足を引き摺りながら帰宅。

8月はウィンドウのお人形も夏向きのドレスに衣替え。後ろの犬の表情がなんともたまりません!


帰宅後、滞在先のホテルの周りを買い物がてら散策。ここは近年出来たジェラートのお店。以前から興味津々で、ついに入ってピスタチオとココナツのジェラートを注文してしまいました。


午後9時過ぎでこの明るさ!ここはご近所のサン・シェルピス教会。夏のパリはいつまでも美しい街並みにひたっていたくなります。


お土産物屋さんのスノードーム。小さなドームの中にパリのランドパークがすべて入ったお値打ちな(笑)パリです!


ピエール・エルメのあるボナパルト通り、エルメの横に新しくクスミティーのブティックを発見。夜でも光るエッフェル塔が目印です。


古書店のウィンドウに赤いエッフェル塔を発見!高さ1m以上はあるでしょうか。こんなの欲しいなぁ。


■8月某日 曇り
 もう今日は買付け最終日。朝から買付けたそのままになっていた商品をまとめてバタバタと荷物を作り、レセプションに預ける。(割れものが少ないため1時間もあれば荷物を作ることが出来るのだが、割れものを主に扱うディーラーは丸一日掛けて荷物を作ることが多い。でも、帰国後の商品整理の煩雑さを思うと、結局同じなのかも…。)フライトは夜なので、昨日出掛けたルートをもう一度たどり、今日も終日行動する予定だ。

 まず出掛けた先は、昨日、アポイントを入れておいたにもかかわらず、先客が居たために何も仕入れずに後にしたディーラーのところ。彼女の「え?帰るワケ?」と少々不服そうな表情が気になっていたのだ。
 そんな心配を他所に、到着するとマダムは笑顔で迎えてくれた。やはり「これ!」というものはないものの、ボタンやらブレードやら、ペップなど細々したものを選ぶ。多分に「お付き合い」というところもあるのだが、私自身もそんな時にお客様が一生懸命何かを買おうとして下さることに毎度感謝の気持ちでいっぱいになるので、今日は逆の立場で。よくよく選んで気に入った物を集めた。

 次は場所を移し、昨日ピアス2点を譲って貰ったマダムの元へ再度訪問。今回、フランスのみの買付けということもあり、ほとんどジュエリーを手に入れられないまま買付けが終ろうとしている。「それでいいのか?」と自問自答するところもあり、昨日見たリングをもう一度見に来たのだ。

 昨日気になっていたのはオレンジを帯びたピンクの不思議な色合い、大粒のトルマリンリング。トルマリンの周囲にはぐるりと小粒のダイヤが取り巻く華やかなもの。早速出して貰ってよくよくルーペで観察。とても良いのだが、エンジェルコレクション的にゴージャス過ぎる嫌いが…。そしてもちろんお値段も高い。「う〜ん。」と唸りながら決断出来ずにいると…またまたマダムが奥からリングの在庫を出してきた。その中にひとつキラリと光るものが。それは今まであまり手に取ることのなかったターコイズのソリテールリング。ターコイズの周りには小粒のローズカットダイヤが取り巻いている。何より、そのシャンクの部分の繊細な細工が私の好みに合致し、「そうそう!こういうのなんだよね〜。」と独り言。結局こちらをチョイス、石で見せるリングも確かに素敵なのだが、やはり細工物にぐっとくるのだ。

 はたと気付くと、昨日はお休みだったマダムのショップが今日は開いている!マダムと挨拶を交わした後、「昨日はいなかったわよね!?」と話しかけると、「昨日までフィンランドにいたの。また明日、フィンランドに戻るのよ。」とのこと。フィンランドでバカンスの最中、一日だけ仕事で戻ってきたという。「えぇ〜!?フィンランド〜?」と驚く私に、「昨日はフィンランドも暑くてね。」と畳みかけるマダム。北欧に縁のない私は、フィンランドの話がただただ珍しい。そして、兎にも角にもマダムと会えて良かった!ここ最近、マダムの持っているソーイング小物がお気に入りなのだ。今日も親切なマダムがあれこれ出してくれてお花やボタン、クロモ、シルクで出来たハンドメイドの小さなトレイをゲット。同じヨーロッパ内のこと。フィンランドへもLCCで安く行けるのかもしれない。

 そして今日の最大の目的地、「アンティークのデパート」ともいうべき膨大な在庫を持つマダムのところへ。ただ、在庫は多くても、この膨大な中から本当に気に入ったものを探し出すのは毎度至難の業。というか、何時間もの間ひたすら探し続ける根気と忍耐力が必要。さて、今日は何が出てくるのか?

 ただ、ここに来るに当たって決めていたことがひとつ。それは自分が気に入ったものだったら、「高くても頑張って仕入れよう!」ということ。気に入った物と巡り会うことが非常に難しくなっている昨今、とにかく出会ったら仕入れるしかないのだ。
 そんなことを思いながら山のような在庫と格闘していたところ、「子供用のドレスの部」に可愛いチャイルドドレスが!アイリッシュクロシェとホワイトワークが組み合わされたそれはアンダードレス付きの贅沢なチャイルド用のドレス。特にかぎ針編みのボンボンが沢山付いている点も可愛い。が、ご多分にもれず高い…。とりあえずそれを「誰にも渡すものか!」と手にし、まだまだ他も探し続けることに。

 今日はオーナーがバカンスで留守中ということで、アシスタントのひとりがオーナーのマダムの携帯電話に画像を送り、その都度お値段の確認をする。確かにこれならバカンス中でも仕事が出来る。パリから遙か遠く海辺の街にいるマダムからは、その都度アシスタントにメールが入る仕組みになっている。そんなやりとりを繰返し、お値段の交渉もバッチリ!今日はそのチャイルドドレスの他、リボン刺繍のティーコージー、生地やリボンを選び、すっかり満足して終了。(そのリボン刺繍のティーコージーも素敵なのだ!)それと共に買付け資金を使い果たし、今回の買付けも終了した。

 予定より早い時間に仕事が終了した後は、パリのお気に入りの街を巡ってホテルへ帰宅。ほどなく来たタクシーで荷物と共に何の問題もなく空港へ。前回のトンデモ買付けの記憶もまだ生々しい中、今回はあまりにあっさりした買付けだった。


仕事帰りに立ち寄ったパサージュ、ギャラリー・ヴィヴィエンヌ。床のモザイクが本当に綺麗!ここに来る度、うっとりして写真を撮ってしまいます。


ギャラリー・ヴィヴィエンヌの後はパレ・ロワイヤルへ。ダニエル・ビュランによるストライプの円柱がシック、街の中心にあるにもかかわらずいつも静かなここも大好きな場所です。


パレ・ロワイヤルの回廊。ここが作られた18世紀に思いを馳せながらコツコツひとりで歩くのも良いものです。


ビーチ…ではありません!夏の間だけ(バカンスに行けない人達のために?)セーヌ河岸に作られた砂場パリ・プラージュです。ここのデッキチェアに水着で日光浴したり、その前をそぞろ歩いたり、本当の浜辺のようです。


パリ・プラージュの実際はこんな感じ。束の間のバカンス気分が味わえます。向こうにはエッフェル塔が。


道端で見つけた色とりどりのラベンダースティックの屋台。わざわざプロヴァンスから売りに来ているムッシュウによるとリボンとラベンダーですべて手作り、オーガニックなのだそうです。「日本の雑誌にも出たよ!」と「婦人画報」を出されてびっくり。


リュクサンブール公園のお花も華やか。集う人達からもバカンスの雰囲気が伝わってきます。


***今回もお付き合いいただき、ありがとうございました。。***