〜後 編〜

■3月某日 晴れ
 今日からまたパリでの買付け。今朝も早くから何軒かアポイントの約束がある。今日もまた忙しい一日が始まる。ホテルを出たのは午前8時。いつものようにバス停へ向うと、なんと道路が片側工事でバス停も封鎖、これではいくら待ってもバスはやってこない。でも、次のバス停はこの道をまっすぐ行って左折、以前そこまで歩くと別ルートで同じバスが通っていたことがあり、それを思い出して次のバス停まで歩き始めた。しかし、次のバス停までたどりついてもまたバス停は封鎖。もっと早く諦めれば良かったのに、三区間分のバスのルートを歩いた挙げ句、結局バスに乗ることは出来ず。気付くと既に30分経過。予定変更でメトロに乗ろうと駅を探し回るも見つからず、「もうダメだ!」と今度はタクシーを拾うことに。なのに、昨日と同じく週末の早朝のタクシーは皆無。通るタクシーは皆お客さんを乗せている。今度こそ「もうダメだ〜!!」と思った瞬間、カラッポのタクシーが登場、私を乗せてくれたドライバーが神様のように思えたのだった。この調子だときっと今日も1万歩。まったく朝からなんということか!


リュクサンブール公園の周囲をせっせと歩けばそのうちバスに乗れると思っていたのですが…。


パリで一番長いヴォージラール通り、この建物の角を曲がるとそこはバス停。だったのに…


とうとうヴァヴァン通りまで歩いて来てしまった!それでもまだこんな写真を撮っていたのだからまだ余裕があったのかも。イエローのミモザが綺麗!

 無事タクシーで仕入れ先にたどり着き、買付けが始まった。まず最初に見つけたのは、お客様から頼まれていたコットンチュール。大きめのサイズ、初聖体の時のヴェールだったものだ。同じマダムから仕入れたのは、アイリッシュクロシェのベビードレス、状態も良い愛らしいドレスだ。

 そしてお約束していた大事なディーラー、布や雑貨を扱うマダムとはビズーで挨拶。何かしらいつも手土産を用意しておいてくれる彼女には、私も心ばかりのお菓子を持ってきたのだが、今日の彼女は「ハイ!マサコ、お誕生日プレゼントよ。」と可愛いボックスを。(中にはプティバトーの可愛いTシャツが入っていた。)今日も私用の商品の入ったボックスを出してくれ、その中からひとつひとつ取り出していく。
 今日、大きな箱から出てきたのは、まずは可愛いパニエ。いつも探している柄の細かい織り生地、お願いしていたすずらんやスミレ、他にもバラのガーランドなどのお花。そして、奥の方から小さな箱が出てきた。開けてみると、いつもしつこくお願いしていたシルクのお花のパーツがいくつも!大きな箱を前に断然テンションが上がる私!「誰にも渡さん!」とばかりにすべて囲い込む。それから猫のソープボックスも。今までお花やエンジェルのソープボックスは扱ってきたが、猫の図柄なんて初めて!19世紀の猫好きが使ったのだろうか?今日は彼女のところから想像していたよりも沢山良いものが出てきて嬉しい。最後によくよくお礼を言ってお別れした。

 もうひとりのマダムもお約束をしていたひとり。生地やレースを扱う彼女は、「ロココ!リボン刺繍!」といつもバカのひとつ覚えのように繰り返す私のために、「これは私のコレクションだったのよ。」と、ポケットからロココを取り出した。こんな風に日頃お付き合いのあるディーラーは皆なんとか私のリクエストに応えようとしてくれる。親切にしてくれる皆にはひたすら「感謝」なのだ。

 他にも何軒か午前中の買付けを終えると、いつものブーランジェリーでお気に入りのプーレ(鶏肉)のバゲットサンドを手早く食べランチ終了。これから一旦ホテルに荷物を置きに戻り、午後はまた別の場所へ。幸いなことに、逆方向のバスは通常通り運行していた。(笑)

 午後イチで向かった先はジュエラーのマダムのところ。付き合いの長い彼女も私の好みを把握し、ガラスケースの中のジュエリーだけでなく、それ以外の在庫を見せてくれる事が多い。今日もフランス人に比べて小さめなジュエリーを好む私に、「こんなのはどう?」と、どこからともなく小さなダイヤのペンダントを出してきてくれる。他に私が選んだのは、ローズカットダイヤ十数石がセットされたリングと透かし細工が美しいダイヤのピアス。いずれもイギリスでの仕入れに比べ、お買い得な感じも魅力だ。どうもイギリス、特にロンドンの場合、「談合かい!?」と思えるほど、どのディーラーも同じようなアイテムにはほぼ同じようなお値段を付けていることが多いのだが、ここフランスはそういったことが皆無。各ディーラーの裁量というか、不思議とそれぞれ全然違うお値段が付けられていることが多い。(以前フランスで、「これはいくらですか?」と尋ねる私に、「これ?」「やるよ!」と言われて、本当貰ってしまったことがある。そんなこともフランスならでは。)

 次に向かった先はマダムとムッシュウのカップル。彼らからも、今まで様々なものを譲って貰ったお馴染みのディーラーだ。何より、二人ともとても優しくて、特にムッシュウはいつも何かしら冗談で笑わせてくれる。マダムは優しい中にもしっかりビジネスをし、ムッシュウが一歩下がってそれをフォロー。何ともいい感じのコンビなのだ。
 そんな彼らのところから今日出てきたのは、ローズカットダイヤがお花型に埋め込まれた19世紀のゴールドブローチ。ロココ模様の細工が素敵な「ザ・フランス19世紀!」といった雰囲気のもの。もうひとつがローズカットダイヤをびっしりセットした立体的なお花のブローチ。沢山セットされたダイヤがまるで生き物のようにきらめいている。ダイヤのきらめきに、我を忘れてブローチを手の上に載せて見入っている私をマダムがにっこり笑っていた。

今日はこのところずっと会えなかったマダムにも会うことが出来た。背が高く大柄で元気の良いマダムは、さっぱりした気質と元気の良さがあまりフランス人らしくない。ひょっとしたらどこか地方の出身なのかもしれない。古い素材ばかりを扱う彼女のところからはたまに面白い素材が出てくるので外せない。今日もまずは様々な色のオーストリッチの羽根を降ろして貰い、セレクト。日本にいる河村から、お客様のピンクの羽根のリクエストがあったことを聞いていたので、ピンクはもとより一緒にディスプレイすると美しいグリーンやブルー、アイボリーも選ぶ。ここでは度々、お人形の材料になりそうな小さなパスマントリー素材を仕入れていて、今日も沢山ある引き出しの中を物色する。

 小さなパスマントリー素材と羽根を無事ゲットし、「他にも何か無いかな?」とキョロキョロしていると…「あら、まぁ!こんな所にこんなものが!」そこには私の大好きなほぐし織りのリボンが!リボンの見本なので、さほど長さは無いが、そのひとつひとつが美しい。人によってはまったく違うフランスのお値段、でもマダムに聞くとそれは納得のお値段。「よしよし!」とばかり、リボン見本の入れられたこちらの箱も物色。リボンと薔薇模様、薔薇模様、そしてスミレ模様、綺麗なリボンが手に入って嬉しい。そんな私に、マダムは「ボタンはいらない?」と聞いてきた。仕入れたばかりのボタンがオフィスにしまってあるとか。私が見るなら、オフィスから持って来るという。ボタンはとっても興味があるけど、今日はそれを見ている時間はなさそうだ。マダムにそう伝えると、「明日は終日オフィスにいるから、ここへ来たら電話をして。」と言う。ただでさえ苦手な電話、でも「お人形向きの小さなボタンが沢山あるのよ。」と言われたら、やはり電話しない訳に行かない。「じゃ、明日また来ます!」とマダムに言って次の場所へ。

 フランス特有のオルモルのフレームはいつもお世話になっているマダムから。オルモルのフレームやガラス器を専門に扱う初老のマダムは独特の化粧がトレードマーク。目尻にくっきり入れられたアイラインが昔の大女優を思わせる。見た目とは違い実はフレンドリーな彼女、今日はその彼女のコレクションの中に気になるフレームを見つけた。それを皆出して貰い、ひとつひとつをじっくり観察。嫌がるマダムに裏側のふたを開けさせて(ふたは小さなネジで留められているため、不器用なマダムではなかなか開かない。)、あ〜でもない、こ〜でもない、と悩んだ挙げ句、今日はフラワーバスケットが付いた横向きのオーバルフレームを選んだ。

 だんだん夕刻が迫ってきた。今日の最後に立ち寄ったのはお人形を扱うディーラー。だが、お人形本体を扱うことが無い私がここでチェックするのは、衣装や小物などなど。今日も私の姿をみとめるやいなや、どこからかムッシュウが走ってきた。どうやら私に見せたい物があるらしい。彼からは度々素敵なお人形用のボネを譲って貰っている。今日も奥から「ほらほら、素敵でしょ?」と持って来たのは豪華なボネ。彼のおすすめはいつも思い切り高価なのだが、こうしたボネはどこにも無いのだ。他に展示してあるボネにはこんな状態も良く豪華なボネは見つからない。出てきたボネは隠してあった特別仕様なのだ。「こんなに素敵だから、当然手に入れるでしょ?」という態度のムッシュウ。そして、それに抗えない私。今日もボネを譲って貰った後には満足気に微笑むムッシュウの姿があった。本日のお仕事はこれにて終了。残りは明日に持ち越すことに。

滞在しているホテルの側のお人形屋さんはアポイントメントオンリー、いわゆる「ジャストルッキング」は通用しません。今日ウィンドウにいたのはウエディングドレス姿のお人形。


もうひとつのウィンドウの中に犬のお散歩をする女の子の姿を発見!アンティーク特有の朽ちた感じの衣装がなんとも良い感じです。

 朝から散々歩く羽目になった仕事の一日がやっと終了。実は今晩、仕事ではないアポイントが。まだ私が20代だった頃からの名古屋の友人、陶芸家の彼とそのパートナーの彼女が滞在しているアパルトマンへお邪魔することになっていたのだ。かつては名古屋に住んでいた彼らだが、沖縄に移住して8年。沖縄でも自らの手で工房を作って陶芸をしている彼と、かつてフランス語でお仕事をしていた彼女。アーティスティックでインテリジェンスなカップルなのだ。日本に住んでいても滅多に会うことが出来ない彼ら、今は沖縄を本拠地にしつつ、世界中を旅して回っている。そして、今回ちょうど彼らがパリに一ヶ月滞在している間に、私がパリにやってきたという訳。しかも彼らが滞在しているのはサン・ミッシェルで、私のホテルがあるオデオンとは目と鼻の先。一度ホテルに戻って荷物を置いたらすぐに歩いて出掛ける予定だ。

 自分のホテルに戻ってきたのは午後6時過ぎ。すぐにシャワーを浴びて、着替えをして、お土産(スーパーで買ったシャンパンと日本から持って来たあられの大袋とア・ラ・メール・ドゥ・ファミーユのショコラ。)を持って、「今から行きます!」とメッセージを入れ、トコトコ歩いてサン・ミッシェルへ。見知ったサン・ミッシェルの裏通り、教えて貰った番地を探してキョロキョロしていると、上から「サカザキ!ここだよ!」と声が。窓から二人が手を振っている。あらかじめ教えられていたドアのコードを押し、アパルトマンの中に入ると細くて薄暗い階段。上からふたりの「大丈夫?」と声が響き、「大丈夫〜!」と返事をすると、もうそこは明るい玄関だった。

 その昔、友人の金工作家が名古屋にあった何千坪もの敷地の古いお屋敷を借りて工房と住居にしていたのだが、その友人の仲良しで同じ敷地内の別棟を工房と住居にしていたのが陶芸家の伸政さんだったのだ。その頃はしょっちゅう会っていたのだが、伸政さんが沖縄に移住して以来、会うことは本当に稀になってしまった。そして、パートナーの昭子さんとはさらに久し振り。私よりもひとまわり以上年上の彼ら、でも話し始めるとすぐに打ち解けて、まるであの頃に戻ったかのようだ。今の生活のこと、昔のこと、共通の友人のこと、そしてフランスのこと、人生の先輩でもある彼らとの話題は尽きず、三人とも話し始めたら止まらない!(笑)用意していてくれていたアペリティフをいただき、シャンパン、白、赤とワインも進み、さらに料理上手な伸政さんが作ってくれたパエリアを食べ、楽しい時間はあっという間に過ぎ、気付いたらもう夜中の12時!こんな楽しい晩はそうそうないと思う。最後は伸政さんがホテルまで送ってくれた。今回の買付けも、フランスのアンティークディーラーやお友達、様々な人に親切にして貰い、本当に「感謝」のひと言。

生ハムやサラミ、オリーブ、美味しいシリアル入りのパン。このアペリティフだけでも感激!


さらに自家製のパエリアのこのムール貝の多さに注目!おふたりに歓待していただき、とても楽しい夕べでした。


■3月某日 曇り
 今日は昨日見ることの出来なかったボタンを見に朝からまたマダムの所へ。今日は、いつも見せて貰う倉庫のような場所はクローズ。昨日マダムに言われた通り、非常に気が進まない中、その場所から電話を掛けてみる。ありがたいことにすぐにつながり、「アロー、昨日来た日本人ディーラーです。ボタンが…」と言い終わらないうちに、遠くからマダムの元気な声が受話器越しではなく実際に聞こえてきた。本当にすぐ近くにオフィスがあったのだ。昨日マダムが言っていたお人形向きの小さなボタン。果たして本当にあるのだろうか?

 アシスタントの女性を伴って走ってきたマダム。ガレージを開けて中へ入れてくれた。と、そこには昨日はなかったボタンのボックスが運び込まれており、後は私が選ぶのを待つばかりになっている。ボックスの中身は本当に小さなボタンばかり、お値段はともかくまずは気になったものを選び出していく。あれも、これも、気になるボタンばかりで、「やっぱり今日来て良かった!」と思いながら選んでいると、さらにもう一箱!恐る恐るお値段を聞くと、思ったほど高額ではなくほっとする。結局欲しいボタンのほとんどを手にし、マダムに感謝しながら次の場所へ。

 フランスでたぶん何本目の指かに入るくらい大量の在庫を持つやり手マダム。ファッション業界でも有名な彼女、一見怖そうな風貌なのだが、いつも私の顔を見るや最上級の微笑みでにっこりされ、こちらもそれにつられてニッコリしてしまうのが常なのだ。今日もガラスの向こうから私に微笑みかけるマダム、あまりの愛想の良さに、「やっぱり凄いディーラーってこうなのよね〜。」と感心してしまう。
 今回の買付けでまだみつけていないもの、それはリボン刺繍のアイテム。状態の良いリボン刺繍のアイテムを見つけるのは本当に至難の業。頼んでおいた現地のディーラーも見つけられなかったというと、頭を抱えてしまう。今回もそんなリボン刺繍アイテム皆無の中、マダムの所にひっそりとリボン刺繍のポーチがあることを発見!早速見せて貰い、状態をチェック。古いシルク製品としては大変状態が良い。が、想像はしていたもののお値段は想定以上。そこからマダムとジリジリ交渉を始め、最後は「しょうがないわねぇ。」という風にマダムに苦笑されてしまった。でも、探していたリボン刺繍アイテムが見つかって、とてもほっとした気持ち。ともかく手に入れることが出来て良かった!
 今日の仕事はここまで。近くのキャフェで赤ワインと一緒に遅いランチを済ませ、バスに乗って帰宅。

 今日、買付けとは別にしなければならない用事は、左岸唯一のデパート、ボン・マルシェのエピスリー(食品館)へ行って、自分の欲しい食材やちょっとしたお土産などを仕入れること。大したものを買う訳ではないのだが、トリュフ塩やらオリーブオイルやら、エピスリーで自分達が欲しい食材を買うのが毎度のことになっているのだ。いつもだったらホテルの側から84番のバスに乗ってボン・マルシェのあるセーブル・バビロンまで行くのだが、いかんせん道が封鎖されていてバスが通っていないので、また今日もオデオンからボン・マルシェまでテクテク歩いてしまった。日本にいる時と違い、どこまででも歩けるような気がしてしまうのがパリの不思議なところだ。

 本日、自分のために手に入れたのはエシレバター250g。近所のスーパーでは無塩しか売っていないので、ここで有塩の大きなサイズ、3.6ユーロ(日本円で¥480〜490ぐらい。)を購入。日本だといったいいくらするのだろうか?ちゃんとそのために日本からタッパウェアも持って来ているのだ。(毎度ジュエリーや小物を持ち帰るために3個の大型タッパウェアを持参。)他に紅茶やらお菓子やらのコーナーもさまよったのだが、ついつい「これなら近所のスーパーで買った方が安いよね。」と思うと、なかなか食指が動かない。買付けと違って、自分のお買い物にはまったく情熱がない小心者なのだ。結局、ヘタレな私は、エシレバターと今晩ホテルで食べる夕食のお総菜を買って帰宅の途へ。

この通りタッパに入れれば冬場だったら問題なく持ち帰ることが出来ます。チーズやバターなどの乳製品は検疫不要なので、合法的に持ち帰ることが出来ますよ。

■3月某日 曇り
 今日は買付け最終日。フライトは今晩午後11時過ぎのため、今日も終日パリの街のあちらこちらに出没する予定。まずは今日もバスに乗って、先日のお邪魔したディーラーの元へ。先日見られなかった商品を今日改めて見せて貰うことになっていたのだ。

 先日会ったばかりのディーラーとまた今日もご挨拶。今日、見せて貰ったのは、様々な色の薄いシルク地、それから美しい色合いのオーストリッチの羽根、ハンドのレース色々。わざわざ持って来てくれた大きめのソーイングボックスを両手に持って眺め回し、「う〜ん。大きい…。もう荷物に入らないからなぁ…。」と頭を振って元に戻す。先日買い忘れていたお花をプラス。最終日になり、残り僅かになった買付け資金を頭で計算しながら、商品を手に持ち熟考。そんな私の頭の中を見透かしたように、「また次まで取っておくから。」とディーラーの優しいひと言がありがたかった。

 昼過ぎには、パリコレに出展のためパリに来ていた友人、Bilitis dix-sept ansのオーナーさんとデザイナーさんとお食事。日本にいる時には忙しくてなかなかお食事することがかなわないのだが、ちょうど前日にパリコレの搬出が終ったばかりの彼らは今日がほっとひと息つける日だったらしい。パリでオリエンタルフードをチョイスすることはまずないのだが(中華は別!フランスの食べ物に飽きると、思わず出汁の効いたヌードル入りのスープ・オ・ラビオリ(ワンタンスープ)を食べに行ってしまう。)今日はオーナーさんの意向で、マレ地区で大人気のタイ料理のレストランへ。
 そんな大人気のここSuan Thaiは運良くテーブルが空いていたものの、広い店内にもかかわらずあっという間に満席!そしてどのメニューもおすすめ!特にグリーンカレーと一緒に出てきた竹籠で出来たお弁当箱?の中に餅米を見つけた時にはパリにいることを忘れて感激してしまった。お互いに仕事の合間の束の間の楽しい時間、あまりに美味しくて、パリコレのお話を伺うのも忘れてしっかりデザートまで食べてしまった。

 お食事の後は、彼らと別れ私は久し振りにマレを探索。何しろ時間ならたっぷりあるのだ。マレのメインストリートとでもいうべきRue des Francs Bourgeoisを歩き、途中のリボンやボタンのお店ENTREE DES FOURNISSEURSでペンダントトップを着ける時のリボンを購入。現行品とはいえ、日本にはないデリケートな色合いが魅力だ。

 さらに歩いて久々にカルナヴァレ美術館へ。しょっちゅう前を通る、以前にも来たことがあるカルナヴァレ美術館。せっかく時間があるので中に入ってみると、「今日は常設展のみなのでgratuitグラチュイ(無料)。」と言われラッキー!荷物をロッカーに預け、ゆっくり見ることに。
 ルネサンス時代の貴族の館を利用したここはパリ歴史博物館。社交界の花形だったセヴィニエ夫人が住んでいたことでも知られている。先史時代からフランス革命はもちろん19世紀の展示品も多く見られ、それぞれの室内はその年代ごとにインテリアをたどることが出来る。まずは最初の展示のアイアンの18世紀の看板にワクワクし、フランスのインテリアの変遷を楽しみ、マリー・アントワネットの遺髪入りジュエリーを恐る恐る眺め…。館内に再現されたミュシャがデザインしたアール・ヌーボー期の宝飾店フーケの中ではひたすら当時にタイムスリップした如くカラッポのガラスケースの中を覗き、気分はお買い物に来た貴婦人だった。

カルナヴァレ美術館のよく手入れされた幾何学的な植え込み。元々貴族の邸宅だったこの建物が出来たのは1548年のルネサンス時代ですが、その後改修を重ね1866年に美術館としてオープンしました。


18世紀の看板やステンドグラス。この王冠の看板はいったい何を意味したのでしょうね?こんなアイアン製の看板が沢山展示されていたルーアンの鉄の美術館に行きたくなってしまいました。


メガネの看板は眼鏡屋さん?ハサミの看板は理髪店?では月と猫の看板は?18世紀当時の様子を想像するのも楽しいアイアンの看板コーナー。ここは何度行っても楽しい場所です。


アイボリーの壁に明るいグリーンがアクセント、18世紀のインテリアのサロン。年代ごとにいくつも並んだこうしたサロンを当時の人々の気持ちになってそぞろ歩くのも楽しい、アンティーク好きにはおすすめの美術館です。


ミュシャがデザインしたゴージャスな宝飾店フーケの店内。左右のステンドグラスも効果的です。こんな空間で接客されてジュエリーを買ってみたいです。


これぞアール・ヌーボー的空間!美しい照明とマントルピース。壁のデコレーションも床も、すべてがトータルで美しかったです。思わず装飾美術館の中にある同じアール・ヌーボーのインテリアのジャンヌ・ランバンの私室を見に行きたくなってしまいました。


マリー・アントワネットの遺髪が収められたロッククリスタルとシルバーのメダイ。ドキドキしながらガラスケースの中を覗き込んでしまいました。


マリー・アントワネットと彼女の寵愛を受けていたランバル公妃の髪の毛が美しく編み込まれたリング。革命後、最後までマリー・アントワネットを見捨てなかったランバル公妃の運命も過酷なものでした。


ちょっぴりグロテスク?貴重な17世紀の針刺し。(私のフランス語訳が間違っていなければ)ヌイイの修道院の少女達がルイ16世のジレの一部を仕立てるために使った針刺し。蝶々の羽根の縁にびっしりピンが刺さっています。

 やっぱりこの手の博物館は何度訪れても良い!見終わると満足感に包まれたままホテルへ。まだ迎えのタクシーが来る時間には早かったが、この余韻を残したまま帰国したくてホテルへ戻った。


***今回も長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。***