〜後 編〜

■3月某日 晴れ
 さっき寝たかと思ったらもう起床!今日は午前6時半オープンの郊外のフェアに出掛けるため、午前4時前に起床。まだ外は真っ暗だ。何とか身支度を調え、外へ出てタクシーを拾う。(こんな時間はまだ地下鉄も動いてはいない。) 目的地のウォータールー駅へ行き、電車が出る時間まで駅構内をウロウロする。今日の電車は午前5時12分発。昼間は人でいっぱいのウォータールーの構内は誰ひとりいない。河村とコーヒーを求めて構内をさまようがまだ売店は開いておらず、じっと待つことしばらく、やっと一軒開いた売店でコーヒーを買い、やっと案内板にプラットホームが表示され、ようやくホームへ。

 列車に揺られること1時間余り、会場は競馬場。(イギリスでは競馬場がアンティークフェアの会場になる事が多々ある。)ゲートへたどり着いたものの、ゲートが開くまでまだ30分ある。まだ空は真っ暗、日が出ていないこともあり、じっとしていられないほどの寒さ!「どうしてこんな地球の果てのこんなところにいるんだろう?」と自問自答しつつ、で真っ暗な中、ガタガタ震え、ひたすらゲートが開くのを待つ。ゲートが開くと、皆一目散に会場の中へ。さぁ、今日も戦いの火ぶたが切り落とされた!

やっと掲示板にプラットホームが出ました!今日はプラットホーム4です。


この通り午前5時1分。まだ外は真っ暗です。今から電車に乗ってGO!

 河村と早足で会場を周り、ジュエラーのケースの中を重点的に見るのだが、なかなかこれと言ったものと出会えない。買付けに来た顔見知りのディーラーと次々ジュエラーのケースの前で鉢合わせしてはその度にお互い困り顔でにっこり、「無いね〜。」と言葉を交わす。

 一体いくつの物を見ただろう?「あ、これ!」と、ケースの中にずっと探していたエナメルで描かれたリングを見つけた。持っていたジュエラーに見せて貰うと、エナメルの状態も良好。(エナメルで描かれたリングは、たいていの場合ハゲハゲであることが多いのだ。)エンジェルの顔立ちも可愛い。(エンジェルモチーフのジュエリーは「おじさん顔」のエンジェルであることも多いので。)「これ!これ!これ!」とばかりに早速手に入れる。

 その後、出てきたのは忘れな草をモチーフにしたブローチ。ヴィクトリアンらしいモチーフのひとつである忘れな草、それを矢と組合わせ。同じゴールドでありながら、梨地になった忘れな草の葉っぱの部分と磨いた仕上げである矢とではまったく質感が違い、その立体的なフォルムにも特徴がある。ジュエリーとしてではなく、ひとつのオブジェとしても美しい。そこはマダムがジュエリー、ミスターがその他の雑貨を扱う初老の夫婦ディーラー。席を外していたマダムにミスターが携帯で連絡を取ってくれ、商談成立!私好みのアイテムが手に入って嬉しい。

 その後、アメジストのブローチにアメジストのペンダント、アメジストのアイテムが続けざまに出てきて、「やっぱりヴィクトリアンは色石だよね〜。」とひとりで納得。久々に以前よくお付き合いのあったディーラーと会うことも出来、「あら、アナタ、こんなところに出ていたの?」と喜び合う。以前はロンドン近郊に住んでいた彼女、今は遠くに住んでいるらしく、滅多にロンドンに出てくることはなくなってしまったらしい。彼女からは以前よくゴールドのチェーンを譲って貰っていたのだが、今回見せて貰うと、思わず絶句するほど高いお値段!以前よりも地金が高騰しているとはいえ、到底納得出来ないお値段に今日は諦める。でも、待っているお客様がいらっしゃるので、買付け中のどこかでゴールドチェーンを手に入れないと…。
 小さなハートシェイプのガーネットリングは、河村が見つけたアイテム。なんとも可愛いラヴリーなリング!可愛いお値段も二重丸!迷うことなく手に入れる。

 三つの屋内のストールを回った後は、寒さに震えながら戸外に並ぶブースを見て回る。途中、見知ったイギリスのディーラーに会い、「どうしてこんなに寒いの!」と八つ当たり。(笑)ずっと暖かで連日お天気だったパリからやって来た私達は、このロンドンのどんよりした空と寒さが我慢出来ない。ほとんど「修行」という意識で、戸外の膨大なブースを見回り、また改めて屋内へ。(結局あれほど沢山の戸外のブースを覗いたものの、何も仕入れるものは無かった…。)もう一度屋内を見回った後は、「もう無い!何も無い!」と半ばヤケ気味でまた列車に乗り帰路についた。

彼岸桜でしょうか?小振りでややピンクの濃い桜を発見。小さな花びらも濃いピンクの蕾も可愛いですね。

■3月某日 晴れ
 ここ最近、ロンドンに滞在するのは一泊か二泊という大急ぎ、強行なスケジュールだったのだが、今回はなんと久し振りに五泊の予定。今日は水曜日、そして「水曜日といえばエンジェルのアンティークマーケット!」ずっと以前、まだロンドンのアンティークマーケットがとても盛んだった頃、月曜日はコベントガーデン、水曜日はエンジェル、金曜日はバーモンジー、とロンドンのあちこちで開催されるマーケットに出掛けたものだが、まだ真っ暗な早朝(午前4時頃)から沢山の人で賑わっていたバーモンジーは再開発でマーケットのあった広場には建物が建ち(でも僅か数軒はいまだに出店しているらしい。)、今は誰も行かなくなってしまった。水曜日のエンジェルも同様に再開発で、何年か前、沢山のアンティークディーラーが入居していたビルが取り壊されると聞いてから足を向けていない。唯一、街中のコベントガーデンのマーケットはいったいどうなっている事やら…?(どなたか最近行かれた方は現状をお教え下さい。)そんな訳で「せっかくロンドンにいるから。」と、恐る恐るエンジェルに出掛けたのだが…。

 エンジェルに着いたのは、以前だったらすっかり出遅れた感のある午前9時。駅の側の昔からあるキャフェを見て変わらぬ姿に少しだけほっとする。が、駅のすぐ側にあったアンティークモールは今ではすべてファッションのブティックに様変わり。いったいあの中に入っていたアンティークディーラー達はどこに?

 その後も、マーケットの場所を巡るが、まだどこも開いていない。どうやら午前10時にならないどこも開かないようだ。以前は早朝から競争して出掛けたマーケットなのに、午前10時からしか開かないなんて、なんてこと!!途中、コーヒーを飲んで時間を潰し、再度マーケットへ。ポツポツ開いているストールもあるが、何とも淋しい有り様。当然仕入れる物は何も無い。大昔、十数年前に私も河村も当時しょちゅうグラスを買付けていたディーラーを見つけ、ストールに入れて貰うが、扱っているラインナップに当時の面影はない。ヴィクトリアンの素敵なグラスなんて、皆どこかへ行ってしまったのだ。ここが活気あった場所だったのはもう10年以上前。時のうつろいの無情を感じつつ、淋しい気持ちのまま、バスに乗って次の場所へ。

 アンティークの仕入れではないが、私達が必ず訪れる場所。それは「ロンドンの御徒町」と私達が呼んでいる貴金属の問屋街。ここで毎度、シードパールなどのジュエリーの修理に使う素材や現行品のジュエリーボックスなどを仕入れるのだ。ジュエリーボックスはもちろん日本でも手に入るのだが、ロンドンの方がアンティークに雰囲気が合う物がみつかるので、ロンドンで探すことが多い。今日も馴染みのマダムから様々な形や大きさのボックスを仕入れる。それにしてもこのマダム、御年はたぶん70台半ばで、いつまでお仕事をしてくれるのか気になるところ。でも、この辺りでほぼ独占販売の彼女、彼女が仕事を辞めたら困る人がいっぱいいると思うのだが…。

 そして次に訪れた先はロンドンの街中にあるアンティークモール。高級なジュエラーばかりが入居するここではほとんど仕入れることがないのだが、顔見知りのディーラーに昨今の業界事情を聞いたり、知人のレースディーラーにどんな入荷があるかを聞く大事なお仕事。今日も絶句するほど高いジュエリーを横目にディーラーとおしゃべり。「そりゃ、25年ぐらい前は日本人ディーラーが空港から直行でここに買いに来たわね!」などと昔話をはさみつつ、ただただ聞き役に徹する私達。あぁ、日本がバブル景気に湧いていたその時代、私達も美味しい思いをしたかった!!(残念ながら当時はまだ学生でした。)

 そんなことをしているうち、何一つ買付けすることなく今日もあっという間に夕方に。明後日、イングランド南西部のサマセットで開催されるフェアがあるため、明日はバースに向かい、そこで泊まる予定。久し振りのバース、フランス移民の街だけあって街並みも美しい。久々の訪れが楽しみだ。

エンジェルで見つけた昔ながらのパブを飾るヴィクトリアンのエッチンググラス。パリにしてもロンドンにしても、新しい物と一緒に100年以上前の物がいまだ現役であることに、その国の底力のようなものを感じます。


十数年、毎度ロンドンで滞在しているヴィクトリアンハウスのフラット。クラシックな内装ながら、キッチン付きで中はとても近代的!旅慣れているとはいえ、ここに帰ってくるととてもほっとします。

■3月某日 曇り
 明日のサマセット地方でのフェアを前に今日はバースに前泊。十年近く前はバースに懇意にしているディーラーが何人かいて、アンティークセンターもまだ賑わっていたため、買付けの度出掛けていたのですが…。ここ数年、懇意にしているディーラーのひとりはリタイアし、もうひとりは「もうバースは死んだわ!」という捨て台詞と共にロンドンに移転。アンティークセンターはどんどんディーラーが抜け、かつての半分以下という淋しい規模に。私達にとって、あえてわざわざ訪れる価値のない場所となってしまい、もうずっと足を向けることがなかったのだ。ただ、丘陵になったバースの街自体はロンドンと違って美しく、大好きで、当時何度も行っていただけに思い出が沢山ある。また、私のお気に入りのバースファッションミュージアムは、以前仕事が終った夕方近くに足を踏み入れたこともあり、ロクに見ないまますぐにクローズ。「今回はもう一度、ファッションミュージアムへ!」というリベンジの意味もあり行くことになったのだ。さぁ、今回のバース行きは如何に?

 荷物をフラットのレセプションに預け、小さなスーツケースにふたり一泊分の荷物を詰め、バース行きの列車の出るパデイントンの駅へ。ロンドンからバースまでは1時間半ほど。日帰りも出来るロンドンからおすすめの観光地だ。以前は日帰りばかりだったので、今回はバースに滞在出来るかと思うと少し新鮮、楽しみだ。

バースの大聖堂はイギリスのゴシック建築。実は何度も足を運んでいるにもかかわらず、帰ってきてからバース市街が世界遺産だということを知りました。


エイヴォン川に掛る石造りのパルトニー橋。その昔、この橋の上の店舗にもレースディーラーが。彼女がリタイアしてからもう何年も経ちます。

 バース駅に着いたら、後は勝手知ったとおり。初めて滞在するホテルだが、場所は良く分かっているので、ホテルまでスーツケースをガラガラ引っ張っていき、チェックインの時間前のホテルに荷物を預け、すぐにそのまま街へ。何度も来ているバースは良く地理が分かっているので、まずは昔何度か足を運んだことのあるスザンナのお店へ。私自身が仕入れることはなかったけれど、10年近く前、アンティークキルトで作ったバッグがあちらこちらのネットショップで一世を風靡していて、彼女とはあちらこちらのアンティークフェアで顔を合わせたものだった。飽きっぽい日本人のこと、きっとそのブームも長くは続く無かったに違いない。上品でフレンドリーなスザンナだったけれど、彼女自身も日本人に若干呆れているかも…。
 何年も来ていなかったバースだけに、果たしてスザンナはまだ現役なのか、お店はクローズしていないかが一番気になるところ。

 昔よく通った坂道になったストリートを登っていくと、そっくりそのまま昔通りにそのお店はあった。ドアを押して中に入ると、お店の中は時間が止まったまま。以前も何度か会ったことのある、これまたダンディーなご主人が出てきて、残念そうに「スザンナは孫のランチを買いに今出掛けたばかりなんだ。」と彼。でも、彼と会えて、スザンナが元気で、お店があったことだけで十分満足な私達は、「スザンナによろしく。」とだけ言い残し、お店を出た。

 さらに坂道を登ると、昔何度も足を運んだアンティークセンターにたどり着いた。あの頃は、地下から2階までぎっしりディーラーで埋まっていたのだが、今は1階と地下だけ。それも半分のスペースになって、そのほとんどがディーラーのブースではなくガラスケースで埋められている。そんなアンティークセンターだが、私と河村はゆっくり丁寧にひとつひとつののケースを見回っていく。昔の賑わっていた姿を思い出しながら、何とも淋しい気持ちで、それでも1時間近くここにいただろうか。河村と共に「もう行こうか。」と何も仕入れないまま建物の外に出た時、何だか逆にほっとしたのだった。

 そして次はやはり昔懇意にしていたテキスタイル系アイテムばかりを扱うディーラーのところへ。以前はしょっちゅう訪れていた彼女のところだが、もうずっとご無沙汰のため、彼女が今現在リタイアしておらずお店が存在しているかどうかも分からない。さらに坂道をどんどん登っていき(バースは本当に坂ばかりなのだ。)、当時坂道の途中にあった別なディーラーのお店がクローズしてカラッポなのを見、不安になりながら登っていくと…目的のお店があった!!が、扉は開いておらず「用事のある方はこちらにお電話下さい。」と小さな紙に書いたメッセージがあるばかり。外から覗くと、やっぱり興味があるものが多々あることが分かる。「閉ってたから戻るか。」と気落ちする河村を制し、「せっかくわざわざ遠くから来たのだからダメ元で電話してみる!」と私。けっして英語が得意でも何でも無い(というより苦手?)にもかかわらず、さっさと携帯で電話してしまったのは、やはり買付け中でアドレナリンがいっぱい出ていたためか。
 運良くマダムは近くにいたらしく、「すぐに開けるから5分待ってて!」という返事。少しだけ待ってめでたくお店に入ることが出来た。

 マダムには昔よくお世話になったことを伝え、早速自由に見せていただく事に。店内に入ると、こちらも昔通り。欲しいものが色々あって、私も河村も思わず目が踊ってしまう。まずは素敵なシルクのグローブケース、マダムと「フランスのものよね。」と言葉を交わしながらチョイス。奥の部屋で生地を見ていた河村も興奮状態でほぐし織りのドレス生地を選んでいる。度々フランスに行っているらしく、ここではイギリスのものよりもフランスのものの方が多い。アンティークセンターではさっぱりだった私達だが、ここでは花園に紛れ込んだ蜜蜂のように、あちらこちらで様々なものを手にしてしまう。シルクの布小物もレースも、シルク生地も選び終ったその時、ふと壁に掛ったベビードレスに目が留まった。それはここしばらく見たことがない素晴らしいエシャーワークのベビードレス。私達の視線に気付いたマダムがそのベビードレスを降ろして見せてくれる。マダムご自慢の品だったとみえて、マダムも盛んに「これは19世紀前期で素晴らしい細工なのよ。」とご満悦。顔を見合わせ「どうしても欲しい!」と、それを仕入れることに決めた私達は早速マダムと商談。マダムもお店で一番上等なものにしっかり目を付けた私達にどこか満足気。
 商談成立し、私達もマダムも笑顔。久々にスペシャルなエシャーワークが手に入り、私も河村も嬉しくてたまらない。スペシャルついでに、マダムに「スペシャルなファンは無いかしら?」と尋ねると、「ファンねぇ…。」と言いながら、ファンが沢山入った箱を出してくれたのだが…。どれもいまひとつの状態ばかりで、マダムがファンをひろげる度に折れた骨がブラブラし、思わず私はクスクス笑い。そんな笑いをとがめ立てするようにマダムは「何笑っているの。」と優しく睨んだ。「日本の女性達は皆とても状態に厳しいのよ!」と言い訳する私。ファンは無かったけれど、思いがけず素敵なエッシャーワークが手に入り、マダムによくお礼を言い、スキップしながら下り坂を下りて帰ってきた。

 今日の最終目的地、そこは二度目の訪れとなるバースファッションミュージアム。実は、数年前にも訪れたのだが、いかんせん仕事が終った後の夕方来たため、あっという間にクローズとなり、すべての展示を見ることが出来ずに終ってしまったのだ。あれ以来、ずっと再訪したいと思っていたのだが、なかなか叶わず、やっと前回のリベンジを果たすことが出来た。

 ここの素晴らしい点は、衣装のコレクションはもちろんのこと、無料の日本語のハンディーフォンでドレスひとつひとつの詳細な説明を聞くことが出来るということ。古い衣装はどれも状態が良く、当時の様式をとても良く伝えていて、非常に勉強になる。また、ドレスだけでなく、靴のコレクションも沢山持っているらしい。ハンディーフォンの解説によると、普段展示されていないコレクションも、事前に予約すれば学芸員が出してくれて別室で見ることが出来るらしい。とにかくワクワクさせられるミュージアムなのだ。
 そして今回のクライマックス。以前はなかった19世紀のドレスのレプリカの試着コーナー。幾つものドレスの他、現代風に作ったコルセットやフープも用意されていて、どれも自由に身に着けることが出来る。かくいう私も、「せっかく来たのだから…。」と河村に手伝わせて試着。(呆れながらも着付けを手伝ってくれた河村に感謝。)まずはコルセットだが、後ろの紐を河村に力尽くで締めて貰い、気分はスカーレット・オハラそのもの!その後、ワイヤーで出来たフープを身に着け、ドレスを頭から被る。布の分量の多いそのドレスの重いことといったら!思い切り締め付けられたコルセットで息も出来ず、ドレスが重くて身動きも出来ず、昔の女の人は本当に大変だったに違いない。多分にお飾り的な存在だったのかも…。ドレスの脇の壁に掛けてあったボネを被りヴィクトリアンのヘンな女完成!

 ファッションミュージアムを心ゆくまで楽しんだ後は、バースの街をどんどん下り、ホテルへと帰った。

18世紀の宮廷衣装だったマンチュア。そのベラボーな横幅には驚きを越えて呆れてしまいます。(笑)手前の小さなドレスは、当時、遠方へ流行を伝えたファッションドールのためのもの。


18世紀のドレス生地って本当に可愛い!男性のベストの重厚な刺繍にも目を奪われます。


まさか自分が着ることになるとは!でも、ヴィクトリアンの人々の疑似体験が出来てとても面白かったです。このドレスは1860年頃のレプリカ。なんとこの下にセーターとジーパンを履いています。

バースの夕ご飯は近くのレストランへ。イギリス、しかも田舎のレストランだけにまったく期待しないまま、それでもあちこちチェックし、手近なところへ。(ロンドンのレストラン事情は最近かなりマシになってきたが、バースはいかんせん田舎なので…。)いつものように白ワインを頼み、メニューを見て「そうだ!野菜不足だからベジタリアンメニューも良いかも。」とベジタリアンメニューの中からメインにほうれん草のタルトをチョイスしたのが運のツキだった。それでも、河村と一緒にスターターに頼んだ海老のビスクスープはまずまずだった。その後、出てきたのは大きなお皿いっぱいの巨大なパイ生地。そしてその中には湯がいたほうれん草がギッシリ。どこまで食べてもパイ生地とほうれん草で、三分の一まで食べたところでギブアップ。「あぁ、やっぱりここはイギリスなのね〜。」と諦めにも似た境地でカトラリーを置いたのだった。

■3月某日 曇り
 今日はバースからさらに列車で1時間弱、同じサマセット州のショウグランドと呼ばれる広大な牧場で開かれるアンティークフェアへ。最寄りの鉄道の駅からはまったく交通手段が無いため、予めタクシーを予約してある。いつもお願いするタクシーは元気の良い年配のマダム。元気でおしゃべり好きな彼女は運転の最中もひっきりなしに私達に話し掛け、それは私の悩みの種でもある。そんな時の河村は一切返事もせず、マダムの相手は私にまかせきり。私は心の中で「オマエも何か話せよ!」とタンカを切りながらながら、表向きはあくまでも穏やかに「そうね。」とか「私もそう思うわ。」とひたすら相づちを打つ。今朝のバースは朝から霧が出てきたが、この辺りはさらに霧が深く車外はいちめん霧に包まれたホワイトアウト。マダムに「気を付けて!」と声を掛ける。ほどなく会場に着くも開場までまだ1時間以上、また今日も寒さの中じっと待つことに。
 コートの下には薄手のダウンジャケットを着込み、手袋をし、マフラーをグルグル巻いてもまだ寒い。この寒さの中じっと待っているのは本当に修行そのもの。周りで並んでいる人々も皆同じように思っているに違いない。

霧の深いバースの街に別れを告げ、ブリティッシュレイルで、さらにカントリーサイドへ。ホワイトアウトの中、タクシーで移動するのはドキドキする思いでした。


 開場の時間になり、ゲートが開くと皆一斉に開場へ。私達も目的のディーラーの待つストールへ足早に向う。まず駆けつけたジュエラーで早速気になるものを発見!それはリボンの形にシードパールがセットされたペリドットのペンダント。シードパールとペリドットの組合わせはいくつか持っているものの、こんなラヴリーなデザインのものはそうそう無い。が、最初に提示されたお値段は私達の予想を超えた高さ。ルーペで何度もじっくり眺め、持っていた男性ディーラーとお値段の交渉を重ねた結果、なんとかお互いに妥協出来るところまで到達した。

 次に見つけたのはずっと探していたゴールドのブレスレット。ロンドンでもバースのアンティークセンターでもいくつ見たか分からないほど沢山のブレスを見てきたものの、満足いくものとは出会えないままここへやって来たのだ。私達が探しているのはパドロックにも彫刻があってチェーンの部分も凝った物。まずパドロックに彫刻が施されているものは少なく、その上ゴールドの地金が上がったことも手伝って非常に高価。ここでもブースにいたのは初老の男性ディーラーで、このブレスの持ち主である奥様は会場のどこかにお出掛けしているらしい。私達がひっくり返したり、ルーペで眺めたり、実際にはめたりしている最中に彼が携帯電話で連絡を取ってくれて交渉。このブレス、パドロックにもちろん彫刻があり、しかもチェーンの一部が梨地になっていてとても個性的。やっと見つかったブレス、何とか手に入れたい。彼がせっせと電話してくれたお陰で、思いがけず思っていたよりもお手頃な価格で手に入れることに成功!「よしよし!」と次のブースへ。

 以前、このフェアにはソーイング物を扱うディーラーが何人かいて、このロンドンから遠いフェアに出掛ける目的のひとつはヴィクトリアンのソーイングツールを買付けることだった。ここ最近、そういったディーラーの姿は減り、なかなかこれと言ったソーイングツールを見つけることは難しくなってしまった。が、今日は昔から顔馴染みのソーイング物を扱うディーラーのところでお裁縫箱のマスコット的な小さなピンクッションが出てきた。極小のヴィクトリアンのビーズでデコレーションされたそれは状態も良く、とても魅力的。久し振り、ソーインググッズの嬉しい出物だ。

 幾つものストールが並ぶこの会場、ひとつひとつのストールを順番に周り、虱潰しに各ブースを覗く。もう何周回っただろうか、疲労に気付くともうタクシーの時間。陸の孤島のこの会場、帰る時にも当然タクシーしか手段は無い。あらかじめ往復で予約してあるので、またマダムが来てくれるはず。約束したゲート前に戻ると既にマダムはスタンバイ、今まで何度となくお世話になっている彼女の車に乗りほっとする。帰路はまた「今日の収穫は?どうだった?」とマダムの質問攻めに遭いながら(その間河村は無言。)駅へと送って貰った。
 ロンドンに戻ってきたのは、もう暗くなってから。明日も早朝からロンドンでの買付けが待っている。

■3月某日 晴れ
 今日はロンドンの最終日。早朝から買付けに出掛け、夕刻にはユーロスターでまたパリへ戻る予定。今日一日でまたパリへ戻ることが出来るかと思うと少しほっとする。まずは荷物をまとめて早朝の肌寒い空気の中、外へ飛び出した。まだ地下鉄も動いてはいない。いつものように足早に表通りに向い、タクシーを拾った。

 まず始めに向ったのはいつもチェーンなどの地金物のジュエリーを仕入れるジュエラー。シールも彼女の得意分野で、彼女が沢山持っているシールは必ず一通り目を通すようにしている。ひととおり挨拶をした後、ガラスケースの中を物色。気になる物は出して貰い、詳しくルーペでじっくり調べる。今回気になったのはグリーンが美しいカルセドニーのシールとシトリンのシール。特にカルセドニーは"pansez a moi (私のことを思って)"のフランス語の文字と一緒にパンジーのお花が彫られている。透明感の美しいシトリンにはイニシャルのモノグラム彫刻。それと美しいアメジストが3石並んだスリーストーンペンダント。そして今回の目的のゴールドチェーンを二本。ゴールドチェーンの一本は通常のケーブルチェーンのリングの中にさらにパーツを加えたちょっと珍しい繊細な細工。やっと納得のいくゴールドチェーンが見つかって嬉しい。マダムと手早く商談を済ますと、次の場所へ。

 長年お世話になっているソーイング物を扱うマダムのところに立ち寄る。彼女がテーブルに沢山並べたソーイングツールは高価ではないかわりに、いまひとつぐっと来るものがない。私のそんな気持ちを察してか、マダムはいつも一通り見終わった私に奥からスペシャルな物を出してくれる。今日出てきたのはべっ甲にゴールドのモノグラムを象眼したフランス製の美しいタティングシャトル。今まで何度か象眼をしたホーンのシャトルを扱ったことがあるが、べっ甲の物は珍しい。陽に透かすとほんのりべっ甲の模様が浮かび上がる。今日はマダムからただひとつこのシャトルを譲って貰う。上質なアイテムのやりとりをし、私もマダムもご機嫌だ。

 ダイヤのフルエタニティーも嬉しい出物のひとつ。サイズの大きいリングの多いイギリスでのこと、9.5号というこのサイズのエタニティーは皆無に近い。このサイズなら華奢な女性にもぴったり、しかも繊細なダイヤの雰囲気は日本女性によく似合うはず。

 繊細なエドワーディアンのクロスは度々お世話になっているディーラーから出てきた。とびきりのジュエリーばかりを扱う彼らからは毎回仕入れられる訳ではないが、何か「これ」と言ったおすすめのある時には、必ず奥から出して見せてくれる。そういった物はガラスケースに並ぶ前の物で、一般のお客様の目に触れることはないのだ。それはとても繊細なミルグレインがびっしり施されたプラチナ製。中央のダイヤが上品に輝き、天然真珠特有のデリケートな風合いが何とも言えない。見せて貰った私も河村も眼がランラン!言葉に出さなくともお互いに「欲しい!」「仕入れたい!」と思っていることが分かってしまう。そして決め手はお値段。物凄く高価かと思いきや、なんとか私達でも手が届くお値段。ふたりして「いただきます!」とお願いした。

 アポイントを入れておいたレースディーラーから出てきたのはホニトンの襟とデボンのボビンだというボーダー、それと19世紀のバンシュのハンカチ。ここしばらくホニトンは持っていなかったので、こちらはすぐさまチョイス。(ヴィクトリア女王お墨付きのイギリスを代表するレースだけにひとつぐらいは持っていないと!)デボンのボビンだというボーダーは、イギリスらしい薔薇模様とレンゲに似た模様が興味深い。確かに言われてみるとどこかベルギーのボビンとは違う雰囲気もある。バンシュのハンカチは未使用品で極上の状態。今日は色々見せて貰った物の中からこの3点に決めた。

 ついでに足を運んだボタンを専門に扱うおばあちゃんディーラー。私がこの仕事を始めてからずっとお付き合いしているので、もう20年近い仲になる。当然、顔もよく覚えて貰っていたはずなのに、今回立ち寄ると「うちはボタンが専門よ。」と話し出すので、「もちろん知っているわ。あなたからは20年来ボタンをいただいているもの。」と遮ると、そこで私の顔を思い出したらしいマダムは、「そうね。うちには良いボタンが揃っているものね!」だって!!(笑)おばあちゃんディーラー、まさかボケてきてはいないはずだけど…。

 最後に出てきた物は"adore"のリング。こちらもいつも必ず立ち寄るジュエラーから出てきた。物凄い数の在庫を持っている彼女。そのすべてをチェックするだけで膨大な時間が掛る。アイテム別に区分けされたトレイにぎっしり詰め込まれたジュエリーをひとつひとつひっくり返していく。余りに数が多いので、私も河村も共同作業でジュエリーのチェックにあたる。そんな中、「これはどう?」と河村がつまみ上げたのがこのリング。"adore"は"regard"に似ているが、どちらも石の頭文字を取った文字遊びのリングであるので、使われている石の種類が違う。こういう文字遊びのリングは、石自体が小さく余り美しくないことが多いのだが、今回出てきたリングは石の大きさもまずまず、それぞれくっきりした色合いで好感が持てる。台座の細工も繊細で、その上シャンク部分はいちめんぐるりと手彫り彫刻が施されている。「綺麗なリング!」と私。シャンクの内側に「バーミンガム1899年」の刻印がある点も年代がはっきり分かって良い。
 実はこのホールマーク、いちいちホールマークブックを持ってくる手間を省くため、主だったホールマークを以前からiPhoneの中に保存してあり、買付け中でもチェック出来るようにしてある。小さなホールマークもiPhoneの画面で引き延ばし、大きくして見ることが出来てとても便利。ジュエラーのマダムにも盛んに感心されてしまった。

 そんな風にあちらこちらのディーラーを巡り、目的の仕入れを済ますと、既に時間は午後1時近く。まだ昼だというのに、午前6時過ぎから活動していたため、もうかれこれ7時間歩きづめ。流石にぐったりだ。行きと同じように、帰りもタクシーでこの場を去り、たまに立ち寄るキャフェでお昼ご飯。フランス風のキャフェだけに、イギリスの中でもやや安全な(笑)気がしてたまにランチに立ち寄るのだ。今日もイギリスとしてはまずまずのランチを食べ、荷物を取りにフラットへ。その後、荷物と共にタクシーに乗り、ユーロスターの発着するセント・パンクラス駅へ。

 パリのホテルに到着したのは夕方遅く。ガラス張りのレセプションから私達の姿を認めるや、レセプショニストのムッシュウが急いで出てきて扉を開けてくれたのが「お帰り!」と言われているようでとても嬉しかった。とにもかくにもパリに戻って来ることが出来てとても嬉しい。

パリに戻ってきたのが嬉しくて夜の散歩へ。浮かれた気分のまま、オデオンからシテ島まで歩いてしまいました。夜のアルコル橋。渡った向こうはオテル・ド・ヴィルです。


夜のノートルダム寺院もとても綺麗!まるでレース細工のようです。歩き過ぎて帰りは思わずバスに乗って帰りました。


ホテルのすぐ側のレストラン。ジャン・コクトーの壁画のある事で有名なここでは、窓越しに眺めるとジャン・コクトーのプレートが。今日はレストランには行かず、いつものキャフェで馴染みのギャルソンに迎えられて軽く夕食。

■3月某日 晴れ
 今日は買付け最終日、夜のフライトで帰国する。どうしてロンドンからそのまま帰国しなかったのかというと、ロンドンからの帰国便はもうリーズナブルなチケットがなく、往復で40万円のチケットしか残っていなかったため。パリ便にはまだリーズナブルなチケットが残っていたので、「それならパリへ鉄道で戻り、シャルル・ド・ゴールから帰るべき!」ということで、こんなルートになったのだ。最終日の今日、もう買付けはないため、ほぼ一日フリー。どこに行こうか?

ロンドンからパリへ戻ってくると、街並みも、建物の装飾も、パリのすべてが心地良く思えます。この違いはいったい何なのでしょう?


近所のスタイリッシュ系のお花屋さんもグリーンを基調にすっきり。白いチューリップの動きがあるフォルムが印象的です。


行きつけの食器とカトラリーのお店SABREのウィンドウはラベンダー色とグレイのシックな組合わせ。

 まず最初にいつものキャフェで朝食。顔馴染みのギャルソンのムッシュウに「またね!」と別れを告げ、バスに乗る。今日の行き先はヴァンドーム広場、85番のバスでマドレーヌ寺院まで行き、普段滅多に行くことのないファッショナブルなサントノーレを歩く。サントノーレを歩いてしばらく、ヴァンドーム広場に出た。ここは言わずと知れたハイジュエリーのブティックがぐるりと連なる広場。その一角にはホテルリッツも顔を連ねている。今日はここでハイジュエリーのウィンドウをじっくり見て、本当に良いもの、高価なもの、素晴らしいものをじっくり見ておこうという魂胆。なにしろここには、ディオール、ミキモト、パテック・フィリップ、ブルガリ、ショーメ、ショーメ、ヴァン・クリーフ&アペル、ブシュロン…e.t.c. 誰でも知っている世界の名だたるジュエラーが集結、たぶんそれぞれの一番豪華な作品を見ることが出来るのだ。ひとつひとつウィンドウに顔を近づけながらじっくり観察。フランスの良いところはこうした超高級品が並ぶショウウィンドウでも誰にも邪魔されずにゆっくり眺められることだと思う。沢山の宝石(しかも大粒!)が散りばめられた大振りで日本とは桁違いに豪華なジュエリーに溜息。日本では保守的なミキモトも、ここではヨーロピアンでファッショナブルなデザインが光る。ゴールドの大粒パールを連ねた長いネックレスをびっしりダイヤでデコレーション。なんてゴージャスなパールジュエリー!多分デザインしたのは日本人ではなくヨーロピアンだと思う。

 幾つものウィンドウを覗いているうちに、どんどん高級なジュエリーに対して自分が麻痺してくるのが分かる。同じブランドでもデパートなどのブランドショップに置いてあるジュエリーはいいわゆる普及品で庶民のものであって、ここに並んでいるものはそのひとつひとつがオーダーで、誰かのために誂えられるもの。その差はケタ違いで、「本当のハイジュエリーとはこういうものだ!」という思いを新たにする。実際のところはオートクチュールのファッションと一緒で、プレタを買うお客がいなかったら立ちゆかなくなってしまうのかもしれないけれど。
 今日、一番感動したのはブシュロンのオウムをモチーフにしたエキゾチックで大振りなネックレス。びっしりセットされたオウムを表現したダイヤがただただ美しく、沢山の石が見る角度によってきらきら眩く光るのをただただ呆気にとられて見ていた。ヴァンドーム広場、ジュエリーの勉強にここほど的確な場所はないと思う。


重厚さといい、完成度の高さといい、豪華さといい、ジュエリーの概念が日本とはまったく違うことを実感してしまいます。いったいこんなジュエリーを誰が、いつ、どこで着けるのでしょう?

 その後歩いて向ったのはオペラ座、以前もオペラ座の見学ルートを訪れたことはあったのだが、その時はゲネプロでオペラ座の劇場部分は見学不可だった。シャガールの天井画が見たい、という河村のために再度足を踏み入れる。何度来てもゴージャスな空間、「豪華絢爛」という言葉はここやヴェルサイユ宮殿のためにあるようだ!今回は劇場内部も見ることが出来て満足。でもやっぱりオペラ座は、次回こそオペラかバレエを見に来てみたい。

「豪華絢爛」ってこういうもの!ヴェルサイユの鏡の間を思わせる回廊は何度行っても唖然としてただただ見上げてしまいます。

 途中、ギャラリーラファイエットの最上階のレストランで手軽にランチ。観光客向けのここは、好きなものを好きなだけトレイにのせてレジへ行く、というビュッフェ形式。お味の方は大して期待出来ないけれど、時間が掛る普通のレストランと違って余り時間がない時には結構便利だったりする。混んでいたけれど、窓際のテーブルをキープすることが出来、パリの景色を見ながら食事をするのも悪くはない。さっさと食事を済ませ次の場所へ。

 次に行くのはモンマルトルにある生地問屋。何度も足を運んでいるこの辺り、以前購入し、お店のディスプレイに使っている赤いダマスク織りの生地が追加で欲しく、またやって来たのだ。入ったのはモンマルトルの丘側にあるこの辺りでは一番大きな老舗生地店ドレフィス。「一度買ったことがあるので、次同じものを買うのは簡単のはず。」と思っていた当ては外れ、どの階にあるのかが分からない私達は、1階、1階、階段を上がり、フロアを隈無く探し、お目当ての生地がないかをチェック。「あっちでもない。」「こっちでもない。」と汗だくになってさまよった挙げ句、やっとロールになった生地を見つけたが、ここからがまた辛抱のしどころ。重いロールを運ぶのはお客ではなく店員で、作業台まで運んで貰って、生地を切って貰い、レシートを受け取って、キャッシャーでお支払い、という昔ながらの売り方をしているここでは、まずは店員の誰かを捕まえなくてはならない。私も河村もキョロキョロしていると、河村と目が合った元気で屈強なマドモアゼルがやって来てくれた。長くて重いロール(なんとこの生地、幅280cmもあるのだ!)を軽々と持ち上げ、作業台で大きなはさみで一気に生地を切る姿は「頼りになるお姉さん」そのもの。にっこり笑顔の彼女から生地とレシートを受け取り、昔ながらの木製の衝立に囲まれたキャッシャーでお支払い。やっと買い物が済んだ。

 今日の最終目的地。モンマルトルから遠く離れたセーブル・バビロンへ。ボン・マルシェの食品館で欲しい食材があり、さらにその後、何軒か先の奇跡のメダイ教会へ寄るためだ。バスに乗り北から南へとパリを縦断。実家の母から頼まれたマリアージュ・フレールの紅茶や自分のためにトリュフ塩などを買い込み、奇跡のメダイ教会へ。何度も訪れている奇跡のメダイ教会でも、母の指令の下、社交好きな母のために50個入り(!)のメダイの袋を入手。いつ来ても思うのだが、この教会の敷地内に入るとどこか清らかな空気が流れていて、とても心地良い。この心が落ち着く感じが好きで、何度も来てしまうのかも…。教会の売店で顔馴染みの日本人シスターと二言三言言葉を交わし、ようやく今回のミッションのすべてが終了した。

街中にあるのにもかかわらずいつ訪れても清らかな空気が流れている奇跡のメダイ教会。キリスト教徒ではありませんが、しばらく礼拝堂に座っていると身も心も清らかになったような気がするから不思議です。(笑)


***今回も長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。***