パリのパティスリー

 パリのパティスリーといえば、真っ先に思い浮かべるのが、私が常宿にしているオデオンにあるジェラール・ミュロ。ジェラール・ミュロは、日本でも最近、何軒か支店を出しているのですが、どうも食べ比べるとやっぱりパリの味と何か違うようです。たぶん、使われている材料の違い(お粉や果 物など)が味に表れているのだと思いますが、本家本元パリのジェラール・ミュロのケーキは、どれをとっても絶品です!食いしん坊の私は、ここの濃厚な味のタルトタタンや、パリパリにキャラメリゼされたクレームブリュレのバニラの香りを思い出すたび、ついついうっとりとしてしまいます。

 その日の買付けを終えた夕方、ジェラール・ミュロに寄って翌朝の朝食用にケーキを買い求めます。夕方のお店は、ケーキやお惣菜、パンを買ってから家路に向かう人たちで、ごった返しています。ケーキを買う人など、お店からはみ出し道にまで列を作っています。大人しく列に並び、「今日は何にしよう?」とドキドキしながらショーケースを覗き込み、やっと自分の順番が回ってくると、他の人の邪魔にならないよう、つたないフランス語で手短かに注文します。でも、お金を払うのはその後で。まずは注文の際に手渡されたレシートを持って奥のレジへと向かいます。レジでお金を払い、レシートにスタンプを押してもらって、そのレシートと引き換えに、やっと注文したケーキ受け取ることが出来ます。

 受け取ったケーキを手に、ルンルンしながら泊まり慣れたホテルへと、オデオン座への坂を登っていきます。パリの街でも、ジェラール・ミュロのケーキは有名なのでしょう。ホテルへ帰る道すがら、私の手にしているここのケーキの包みを見た見ず知らずのフランス人から「そこのケーキはとっても美味しいよ!」と声をかけられたこともあります。

 翌朝は、買付けに出掛ける前のホテルの部屋で、朝から二つのケーキを平らげ、ホテルを後にします。メトロに乗る前に、行きつけのカフェで濃いエスプレッソを流し込んで、おしまい。こうして、私のパリの朝は始まるのです。

 味だけでなく見た目も美しさも抜群です。特に週末の夕方には、ホームパーティーへのお土産でしょうか、このようなホールのケーキを買って帰る人の姿が目につきます。


 ジェラール・ミュロで美味しいのは、ケーキだけではありません。フランスらしい大人の味のチョコレートもプレゼントにぴったりですし、可愛い色合いのボンボンやマカロン  も魅力的です。お菓子だけでなく、サラダやテリーヌなどのお惣菜も、よく夕食のために買って帰ります。


 ついついこの日も「夕食後にひとつ!」と三つも買ってしまいました。タルトタタンとショコラ、もうひとつはパッションフルーツのソースがかかった酸味が美味しいミロワールです。


 ジェラ−ル・ミュロは、メトロのオデオンの駅から歩いて3分ほど。近くには、有名な花屋クリスチャン・トルチュや、向えには南仏プリントのソレイアードのお店もある6区のお洒落なエリアです。
Gerard Mulot 76, rue de Seine Paris 75006