ケンジントン・ガーデン

 ロンドンの中でも、私のお気に入りの場所。それは、常宿にしているグロスターロードからも歩いていける距離にあるケンジントン・ガーデンです。ケンジントン・ガーデンは、故ダイアナ元妃が住んでいたケンジントンパレスに隣接することでも知られますが、ロンドンの中にある公園ハイド・パークやリージェンツ・パークと並んで、広大な敷地を持ち、ロンドン市民にとっても、私たち仕事でロンドンを訪れた者にとっても、普段のロンドンの喧騒を忘れさせてくれる貴重な場所でもあります。

 ことに私のお気に入りは、この広大な敷地の片隅にあるカンクン・ガーデンで、噴水のあがる池を望みながら、木立が生い茂る散歩道に囲まれたカンクン・ガーデンは、さながら「秘密の花園」といった雰囲気です。ここを取り囲む散歩道は、必ずリスに出会える場所でもあるので、私は密かに「リスちゃんの小径」と呼んでいます。ここには、木で出来た素敵なベンチがいくつかあり、考えごとをしたり、散歩のひと休みにはうってつけの場所です。仕事を終えた日曜日の夕方など、リスたちにやるナッツやビスケットなどを持ってここへやってくるのは、忙しいロンドンでの滞在のほっとするひとときでもあります。

 また、このカンクン・ガーデンのすぐ脇には、ヴィクトリア女王がここで育ったことでも有名なステーツ・アパートメンツがあり、実際にヴィクトリア女王が着用した王室のドレスコレクションの数々を見たり、豪華な回廊を巡ることも出来ます。特に、ここで興味深いのは、1920年代の社交界へのデビュタントの様子を再現した、当時のドレスの展示と、その頃の仕立て屋の店舗の様子を再現した部屋です。この仕立て屋の店舗に展示されている様々な色の糸や針などのソーインググッズ、美しいシルク織物など、私の普段扱っている商品そのものが当時の様子そのままに展示されていて、思わず興奮して見入ってしまいます。

 どうぞ、ロンドンにお出かけの際、お時間がありましたら、是非ロンドンの公園へも足を向けられることをおすすめします。ロンドンで生活する人々と共に、思い思いに公園でのんびり過ごすひとときは、きっとロンドンという街の別 な面を見ることが出来る思い出の一つになるかと思います。

ケンジントン・パレスのゲートには、
今でも故ダイアナ元妃のために花をたむける人が後をたちません。


ヴィクトリア女王の彫像からステートアパートメンツをのぞんで。
ヴィクトリア女王ゆかりのケンジントン・ガーデンには、それぞれのゲートにもクイーンズゲイトやプリンスゲートなどという名前がつけられています。


街中にありながら広大な敷地を持つロンドンの公園。
口の悪いフランス人曰く「あぁ、あれはロンドンの街中にある牧場さ。」と言ったとか言わないとか。


さながら「秘密の花園」という感じのカンクン・ガーデン。
このように木立に作られた窓から中のお庭を眺めます。


私が「リスちゃんの小径」と呼んでいるカンクン・ガーデンの周りの散歩道。
この日は、雨のためリスちゃんは現れませんでした。いつもは、このベンチで静かに刻を過ごすのがお気に入りの時間です。