アンティークのペチコート

 私のお気に入りのひとつに、アンティークのペチコートがあります。お仕事の際に、たまに履いていることもあるので、ご覧になったことがある方もいらっしゃるかもしれません。

 

細かい手刺繍とカットワークの施されたキャミソールとペチコートのセット。
キャミソールのサイズは、現代のサイズでいえば5号ぐらいでしょうか。
華奢な女性が身に付けていたものに違いありません。

 「風と共に去りぬ」のスカーレット・オハラが、召使にコルセットの紐を締めさせる着付けのシーンは有名ですが、シルクやハンドメイドのレースなどの素材で作られた「ヴィクトリアンのドレス」は、生地の状態や、当時の人々が現代よりも小柄だったということ、現代と違い常にコルセットを着用していたという体形の違いから、残念ながら実用という点においては難しいものがありますが、同じような年代の物でも、当時下着のはずだったコットンのペチコートは、まだまだスカートとして、十分現役でお使いいただける物ばかりです。

ハンドメイドの刺繍が見事な広幅のボーダー。こういったボーダーは、ペチコートの裾を飾るために作られました。こういった手の込んだ仕事を目にするたび、「当時のお針子に生まれなくて良かった。」と思わずにはいられません。

 というのも、当時のアッパークラスでは、嫁入り道具として、デザインが流行に左右されるドレスはあまり作られませんでしたが、それが下着となると、贅沢な手仕事の施された物が、何ダースも少しずつデザインを変えて沢山整えられ、もともとがコットンで作られたこともあって、状態の良い物が現代でも多く残っている、という理由があるからなのです。ことに、1900年前後のペチコートは、コットンでも、たっぷりと生地が使われており、2枚仕立て、3枚仕立てのものが多く、2段3段と切り替えのあるものも少なくありません。縁飾りには、レースが贅沢にあしらわれており、たまにハンドメイドのレースが使われている物まであります。また、この時代は、「腰あて」を着けたバッスルスタイルが主流だったため、ペチコートの後ろ側の裾がその分少し長く作ってあることも特徴のひとつです。
 そんな中でも、特に私が気になっているものは、手刺繍の縁飾りが何段にもぐるりと飾られているもの。ヴィクトリアン当時のハイクラスの女性たちの華やかな暮らしぶりが伝わってくるようです。

ペチコートとカシュクールを組み合わせたお気に入りのスタイル。
たっぷりと沢山の生地を使用してあるため、思いのほか暖かです。

 ペチコートの中には、「少し生地が薄いかしら?」と思われる物もありますが、たいていは、1枚下着を着けていただいたら、十分に履きこなすことが出来ます。また、私自身、寒い冬の間などは、シンプルなスカートを着けた上からペチコートを履くこともあるほどです。そんなペチコートを身につけた時の私のお気に入りスタイルは、やはりアンティークのキャミソールに、黒のカシュクールやカーディガンを合わせた、甘すぎない着こなしです。「あまりにも、フリルがあって気恥ずかしい。」と思われる方も多いかもしれませんが、束の間の貴婦人の気分を味ってみるのはいかがでしょうか?