アンティークとの時間

 ヨーロッパに買付に行き、集めたアンティークの数々を一つ一つ梱包して送り、それらが自宅に到着すると、それから私とアンティークの品々との蜜月が始まります。それぞれ、なるべく良い状態の物を仕入れるようにはしていますが、そこはやはり永年の時を経たものですから、洗ったり、アイロンをかけたり、繕ったり、磨いたりという作業の始まりとなります。私にとっては、お客様へ橋渡しをする前の、アンティークとじかに触れ合うことの出来る、かけがえのない楽しい時間でもあります。

 可愛い柄のテキスタイルが、手洗いして更に美しい色柄によみがえったり、レースにアイロンをかけたり繕ったりするひとときに、手をかけることによってアンティークがより美しく仕上がっていくことに、とても幸せを感じます。カメオやアイボリーのジュエリーでも、ベビーオイルで優しく拭いてあげるだけで、その艶やかさは断然違ってきますし、ひとつひとつ愛情を込めてお手入れすることで、それぞれのアンティークへの愛着もひとしおとなります。シルバーの物も同様で、「すぐ黒くなってしまうから、日常のお手入れが大変。」と敬遠されがちですが、使うことと共にお手入れすることも楽しみの一つだと考えれば、シルバーを磨いて美しい光沢を蘇らせるのも、うきうきした楽しいひとときになることではないでしょうか。

 アンティークを使うことと共に、お手入れすることも、楽しみの一つにしていただけたら。そんな時間を過ごしながら、それぞれのアンティークがどのような人に、どのような使われ方をしていたか思いを馳せることで、遠いヴィクトリアンの世界へタイムトリップ出来るような気がするのです。

 ヨーロッパからは、こんな大きな箱にアンティークを詰めて何箱も送ります。はるばる海を越えてたどり着いたかと思うと、いつものことなのに、なんだか愛しい気持ちになります。


 愛用しているお裁縫道具。ハサミとめうちは、ヴィクトリアンのもの。ピンクッションと手作りのシザーケースはお客様からのプレゼントです。


 アイロンがけは、好きな作業の一つ。テキスタイル一枚一枚も、お洗濯のあと、アイロンをかけ、きれいになると、嬉しくなってしまいます。


 カメオやアイボリーは、乾燥を防ぐためにたまにベビーオイルで油分を補ってあげると艶やかさが違ってきます。私は、ベビーオイルを使っていますが、イギリスのアンティークディーラー達からは、「オリーブオイルがいいのよ。」と言う声も聞かれます。綿棒を使って全体的に油分を補い、余分なオイルは柔らかい布などで拭ってあげてください。


 仕事机の前に張ってあるお客様からいただいたおハガキやお手紙。仕事をしながらすぐ目に入るように、目の前の壁に貼ってあります。お客様からのお便りは、私の元気の素です。