香 水



香水瓶いろいろ。数あるアンティークの中でも、香水瓶はお気に入りのアイテムです。 

 香水などの香りの物に興味を持つようになったのは、いくつの頃でしょうか。本当に小さかった子供の頃、母の鏡台の引き出しに、イタリアのガラスモザイクをあしらったアトマイザーが入っていて、シュッとした時の冷たさと、広がる芳香が、子供心に興味津々だったことを覚えています。今でも、海外でパヒュームリーを通 りかかると、ついつい足を踏み入れて、お花畑の中に迷い込んだ蝶のように、あれこれすべての香りを試してみたくなってしまいます。

 自分で、初めて香水を買ったのは、10代の頃だったと思います。確か資生堂の「ばら園」で、大人になってからもずいぶん使っていました。あの頃の「ばら園」は、ボトルも今と違って、擦りガラスのロマンチックな感じで、海外の香水ほど個性的でなく、さりげない優しい香りが気に入っていました。以前、代官山の素敵なお店マチルドインザギャレットの酒井しょう子さんと一緒にお食事した際、その後姿からほのかなバラの香りが漂い、それがとてもご本人に似合っていらして、うっとりしたことを覚えています。

 ここ最近のお気に入りは、“L'EAU D'ISSEY”のトワレで、かすかな桃の香りと甘過ぎない華やかな感じが好きなのと、なによりもオリエンタルである自分には馴染みやすい気がして、お仕事の時、気分を変えたり、気合を入れる為にも、よくつけています。逆に、お休みの日は、南仏のバスまわりのグッズを扱ったお店L'OCCITANEの“THE VERT”のトワレで、爽やかなグリーンティーの香りを楽しんでいます。同じグリーンティーの香りでも、もう少し濃厚なイギリスのCRABTREE&EVELYN;の“SONG DE CHINE”は夏場によく纏う香りです。「中国の歌」という名前のとおり、イギリス人がオリエンタルな物に憧れる雰囲気が、ネーミングにもよく表れていて、夏のイギリスの夕暮れを思わせます。この二つは、同じグリーンティーをモチーフにしながらも、南仏とイギリスという国民性の違いがよく香りに表れているようで、そんなところにも興味深いものがあります。

 また、以前は、オンオフ問わず、“Fleur d'interdit”や“EVELYN”など女性らしいフローラル系の香りをよく好んでいましたが、お洋服に似あう似合わないがあるように、私の個性には、いかにも女性的なフローラルな香りよりも少しシャープで辛口な香りが合う気がして、最近はあまりつけていません。本当は、三島由紀夫の小説「鏡子の家」のヒロイン鏡子に憧れていて、クラシカルで小惑的で上品で、それでいてちょっぴり毒のあるような、そんな香りが似合うような女になりたいと思うのですが...。自分に似合う香りを探し求める事は、自分探しの旅であるようにも思えるのです。